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M10は「ねじ」だけじゃない!リニアの新型車両です

JR東海が発表した「M10」という名前は、多くの人にとって馴染みのない言葉でしょう。インターネットで「M10」と検索すると、上位にはねじの規格に関する情報が表示されますが、今回話題になっているのはリニア中央新幹線の新型中間車両です。山梨の実験線で2025年夏から走行試験を開始し、従来の車両とは一線を画すシルバーボディにゴールドのラインが特徴的。サメ肌を模倣したフィルムによる空気抵抗削減技術を搭載し、環境負荷の軽減を目指しています。

目次
  • 工業規格「M10」が検索上位を独占
  • リニア車両M10の技術
  • 生物模倣技術リブレットフィルムの実力
  • 高温超電導磁石による革新的コスト削減
  • よくある質問

M10は「ねじ」だけじゃない!リニアの新型車両です【リニアニュース】イメージ画像 作成:junk-word.com
リニア新型車両「M10」の高速に流れるラインのイメージ画像(生成AI) 作成:junk-word.com

リニアの「M10」とねじの「M10」

インターネット検索で「M10」と入力すると、上位にはねじやボルトに関する情報が並びます。リニアの新型車両M10が、まさかねじと間違われるとは誰も想像しなかったでしょう。

工業規格「M10」が検索上位を独占

機械工学や建築の世界では、「M10」といえば直径10mmのねじを指すのが一般的です。このサイズは自動車の組立てから建築現場まで幅広く活用されており、技術系の現場では日常的に使われる用語でもあります。長年にわたって蓄積された豊富な技術情報があるため、新登場のリニア車両名よりも既存のねじ規格が検索結果の上位に表示される傾向があります。

新しい技術や製品が既存の用語と同じ名称を使う際によく起こる問題といえるでしょう。専門分野が異なれば同じ言葉でも全く違う意味を持つため、 リニアの情報を探す際には「リニア M10」のように指定する必要があります。

リニア車両M10の技術

M10は先頭車両と最後尾車両の間に挟む中間車両として設計され、既存のL0系やL0系改良型試験車と組み合わせて編成を構成します。JR東海によると、M10は現行のL0系改良型試験車をさらに改良し、環境負荷低減などに関する開発成果を反映した車両とされています。

単独での運行は行わず、段階的な技術向上を図りながら最終的な営業車両の仕様決定につなげていく重要な役割を担っています。M10では特に高温超電導磁石専用の車体設計や、サメ肌を模倣したリブレットフィルムなど、将来の営業運転を見据えた先進技術の検証が行われています。

ここがポイント!

M10は技術検証のための試験車両です。段階的に新技術を検証することで、営業運転開始時の安全性と信頼性を確保する慎重なアプローチが採られているのです。

サメ肌技術が切り開く未来の交通

生物模倣技術リブレットフィルムの実力

M10の最大の特徴は、車体表面に貼られたリブレットフィルムです。サメの皮膚が持つ微細な溝構造を人工的に再現したもので、溝の深さはおおむね50マイクロメートル(0.05mm)程度とされています。サメの皮膚構造が水中移動に有利とされる特性を、鉄道車両で本格的に応用したのが、今回新造されたM10のリブレットフィルムです。

この生物模倣技術は航空業界でも導入が進んでいます。全日本空輸(ANA)は貨物機でリブレットフィルムを試験導入し、年間最大約250トンの燃料と約800トンのCO2削減が見込めると試算しています。日本航空(JAL)も2023年から国際線機材で実証を始めており、燃費改善効果を検証中です。これらの検証により、リブレットフィルム技術の有効性が期待されています。

高温超電導磁石による革新的コスト削減

M10のもう一つの重要な技術革新は、高温超電導磁石の専用設計です。従来は超電導磁石を液体ヘリウムでマイナス269℃まで冷却していましたが、M10ではマイナス255℃までの冷却で動作可能な高温超電導磁石となり、液体ヘリウムを使用せず冷凍機による直接冷却が可能となりました。

液体ヘリウムを使わずに冷凍機による直接冷却が可能となることで、全量を輸入に依存していた液体ヘリウムの調達リスクを回避できます。JR東海によると、この技術により消費電力の削減効果も期待できるとされており、運行コストの改善が見込まれています。高温超電導磁石の研究開発は長期間実施されてきましたが、営業運転レベルの安定性や耐久性への対応についてはまだ試験の段階であり、実際の営業車両への本格採用には今後の検証成果が用いられます。

ここがポイント!

高温超電導磁石の実用化は、電力送電や医療機器など様々な分野への応用が期待される技術革新です。リニア中央新幹線が世界に先駆けて実用化することで、産業界全体への波及効果も期待されます。

よくある質問

Q

M10の開発費用はどのくらいかかったのですか?コストダウンと言っても、開発には多額の費用が必要だったのでは?

A

JR東海は具体的な開発費用を公表していませんが、M10の設計思想は「将来の営業運転でのコストダウン」を重視しています。無塗装化で製造工程も簡素化されました。初期投資は必要ですが、長期的な運営コスト削減により投資回収を図る戦略です。

Q

サメ肌フィルムは雨や雪の悪天候でも効果を維持できるのでしょうか?

A

リブレットフィルムの耐久性は重要な検証項目です。航空業界では既に実用化されており、雲の中を飛行する過酷な環境でも効果を維持しています。M10では2025年度末まで約2000キロ/日の走行試験を行い、様々な気象条件下での耐久性を検証中です。微細な溝構造が損傷した場合の性能への影響についても詳細に調査されています。

Q

なぜ今になって高温超電導磁石を導入したのですか?以前から技術はあったのでは?

A

高温超電導磁石自体は2005年から走行試験を実施していましたが、営業運転に必要な安定性と耐久性の確保に長期間を要しました。特に磁力が急低下する「クエンチ現象」の克服が大きな課題でした。報道によると、高温超電導磁石の技術的な成立性について一定の見通しが得られたとされ、営業車への本格導入に向けた検証が進んでいます。

Q

無塗装のシルバーボディは見た目が安っぽく見えませんか?デザイン性はどうでしょう?

A

M10のデザインは機能性を重視した結果です。無塗装のアルミ合金は航空機でも使用される高品質な素材で、決して安価な仕様ではありません。ゴールドのラインは「高速に流れる光」をイメージした未来的なデザインで、従来の白と青の塗装とは異なる先進性を表現しています。環境への配慮と洗練されたデザインを両立させた、新しい時代のスタイルと言えるでしょう。

Q

M10の技術が営業車に採用された場合、運賃への影響はあるのでしょうか?

A

M10の技術革新は長期的な運営コスト削減を目的としており、消費電力改善により運営効率の向上が期待されます。ただし、運賃設定は技術コスト以外にも建設費回収や経営戦略など複合的要因で決まるため、直接的な値下げ効果は限定的かもしれません。むしろ安定運行と環境負荷軽減による長期的な価値提供が主な効果となりそうです。

リニアの新型車両「M10」のまとめ

  • M10はねじではなくリニア新幹線の新型中間車両
  • 検索では工業規格のねじが優先表示される
  • 車体表面にサメ肌模倣のリブレットフィルムを装着
  • 空気抵抗を16両換算で約1%削減する技術
  • 高温超電導磁石専用の車両設計を採用
  • 液体ヘリウム不要で冷凍機による直接冷却
  • 消費電力削減効果が期待される
  • 無塗装シルバーボディにゴールドラインが特徴
  • 塗装工程省略で製造工程を簡素化
  • 2025年度末まで走行試験を実施予定
  • 日立製作所が設計・製造を担当
  • 既存のL0系と組み合わせて試験実施
  • 営業線仕様決定に向けた重要な試験車両
  • 環境負荷低減をテーマとした技術革新
  • 生物模倣技術の鉄道分野への本格導入