漆器と聞くと、黒や朱の塗り、あるいは金銀が輝く蒔絵を思い浮かべる人が多いかもしれません。国立歴史民俗博物館の特集展示「くらしを彩る 漆絵のうつわ」が取り上げるのは、盆や折敷、皿、重箱といった日々の生活で使われた漆器です。赤・黒・黄・緑の彩漆で描かれた植物や動物、器物の文様から、江戸時代後期から近代の人々が身近な道具に託した色彩感覚をたどります。高級な調度品だけでは語れない、日本の漆文化の広がりに目を向ける展示です。
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日用品の漆器からたどる暮らしの美
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約1,000件のコレクションから188点を初公開
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色と文様に表れた各地の漆文化
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開催情報
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漆絵をもっと楽しむための漆工入門
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漆絵は色のついた漆で描く
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漆絵と蒔絵は何が違うのか
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日本の漆利用は縄文時代までさかのぼる

日用品の漆器からたどる暮らしの美
約1,000件のコレクションから188点を初公開
国立歴史民俗博物館は2023年度、漆絵を中心とする約1,000件の漆器コレクションの寄贈を受けました。公式ページによると、今回の展示では新海洸漆絵コレクションから188点が初公開されています。展示資料はすべて国立歴史民俗博物館の所蔵品です。
コレクションの中心となるのは、江戸時代後期から近代にかけて作られた盆、折敷、皿などの飲食器です。このほか、蓬莱箱、重箱、飯器など、暮らしの中で使われた漆器も含まれます。展示では、高価な蒔絵や螺鈿を施した調度品とは異なる視点から、各地で作られた実用品に目を向け、日本列島に広がった漆文化と、日常の道具に色や文様を施してきた人々の美意識を紹介しています。
色と文様に表れた各地の漆文化
漆絵は、漆に顔料を混ぜた彩漆で文様を描く技法です。展示資料には、季節の植物や動物、扇などの器物を題材とした文様が表され、赤・黒・黄・緑などの色が使われました。
江戸時代後期の「流水瓜茄子漆絵足付折敷」には、赤・黒・黄・緑の4色が用いられています。「菊羽根漆絵足付丸盆」は植物の花穂を鷹の羽根に見立て、黒地に赤で秋の風情を表したものです。「紋散漆絵丸盆」では、4色の彩漆による丸い文様が器面に配されました。
折敷とは、食事の際に食器を載せて使う台です。こうした実用品にも色や文様が施されていたことから、漆絵が暮らしの道具を彩る技法として用いられていたことが分かります。
展示では、会津、浄法寺、朽木、桑名など、各地の産地で作られた漆器も紹介されています。江戸時代後期から近代にかけて作られた器を通して、それぞれの地域で特徴のある日用品が生産されていたことが示されています。
開催情報
| 展示名 | くらしを彩る 漆絵のうつわ |
|---|---|
| 主催 | 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国立歴史民俗博物館 |
| 会期 | 2026年7月7日(火)~8月30日(日) |
| 会場 | 国立歴史民俗博物館 総合展示 第3室・第4室 特集展示室 |
| 開館時間 | 9:30~17:00(入館は16:30まで) |
| 観覧料 | 一般900円、大学生500円。20名以上の団体は一般800円、大学生400円。高校生以下・18歳未満は無料。障がい者手帳等保持者は介助者とともに無料。総合展示も観覧可能 |
| 休館日 | 7月13日(月)、7月21日(火)、7月27日(月)、8月3日(月)、8月4日(火)、8月17日(月)、8月24日(月) |
漆絵をもっと楽しむための漆工入門
展示に登場する漆絵の技法や蒔絵との違い、日本で漆が使われてきた歴史を知ると、器の色や文様を見る視点が増えます。ここからは、展示をより楽しむために知っておきたい漆の知識を紹介します。
漆絵は色のついた漆で描く
漆絵では、漆に顔料を混ぜた彩漆を使って文様を描きます。顔料とは、水や油などに溶けず、細かな粒の状態で色を付ける材料です。彩漆は、漆が持つ塗料としての働きと顔料の色を組み合わせたものと考えると分かりやすいでしょう。
展示の公式ページでは、漆絵が中国や日本で古代から行われ、近世には庶民が使った雑器の装飾に盛んに用いられたと説明されています。ここでいう雑器は、日常生活で使う実用的な器を指します。漆絵は、高級な調度品だけでなく、身近な盆や皿を彩る方法にもなりました。
漆絵と蒔絵は何が違うのか
漆絵と蒔絵の違いは、文様を表す材料と工程にあります。漆絵では、漆に顔料を混ぜた彩漆を筆につけ、そのまま器の表面へ文様を描きます。赤や黄、緑など、彩漆の色が模様として残るため、絵を描く方法に近い技法です。
蒔絵では、最初に絵漆と呼ばれる漆で文様の形を描きます。東北経済産業局の会津塗の解説では、蒔絵筆に絵漆をつけ、半乾きになったところへ消粉と呼ばれる微細な金属粉や、顔料を用いた色粉を綿で蒔く工程が紹介されています。名前にある「蒔絵」の「蒔く」は、粉を蒔き付ける工程を表しています。
日本の漆利用は縄文時代までさかのぼる
日本で漆の利用が始まったのは縄文時代だと考えられています。文化遺産オンラインには、山形県押出遺跡(おんだしいせき)から出土した縄文時代前期後半の彩漆土器が掲載されています。6点の土器はいずれも外面全体に赤漆が塗られ、そのうち3点には黒漆で幾何学的な細い線が描かれました。赤と黒を使い分ける漆工技術が、縄文時代に存在したことを示す資料です。
縄文時代の彩漆土器と、今回展示されている江戸時代後期から近代の漆絵の器は、時代も器の姿も異なります。両者を同じものとして扱うことはできませんが、漆で器を彩り、文様を表す技術が異なる時代の資料に確認できます。展示の器は、その長い歴史の中でも、日用品へ広がった漆文化を知る資料として位置付けられます。

