ジャンクワードドットコム・歴史と暮らしのポータルサイト

2025.05.22

京都市歴史資料館で開催「祇園祭 いま・むかし」展ー時代を超えて受け継がれる伝統の祭り

京都市歴史資料館では特別展「祇園祭 いま・むかし」が開催されます。明治維新後の近代化、戦後の民主化、高度経済成長期以降の合理化など、社会が大きく変わる中で祇園祭がどのように守られ、伝えられてきたのかを館蔵資料から読み解く貴重な機会です。特に令和5年に創立100周年を迎えた公益財団法人祇園祭山鉾連合会の協力のもと調査された資料にもスポットライトが当てられています。

目次
  • 近代化と祇園祭
  • 視覚資料に見る祇園祭
  • ギャラリートーク
  • 関連講座「祇園祭山鉾連合会設立に至る経緯」
  • 開催情報
  • 祇園祭は疫病退散を願う平安時代の御霊会が始まり
  • 祇園祭のハイライト:山鉾巡行
  • 2025年の祇園祭

京都市歴史資料館で開催「祇園祭 いま・むかし」展ー時代を超えて受け継がれる伝統の祭り【歴史ニュース】
祇園祭

特別展「祇園祭 いま・むかし」

近代化と祇園祭

祇園祭の歴史において、幕末の「蛤御門の変」は重要な転機となった出来事とされています。1864年に発生したこの事件では、京都市中で大規模な戦闘と火災が起こりました。このような困難な時期を経て、明治時代に入ると祭りの運営体制にも変化が訪れました。

明治時代以降、日本社会は急速な近代化の波に飲み込まれていきました。祇園祭もまた例外ではなく、電線や路面電車といった新しい都市インフラとの共存を模索する必要がありました。展示では、「改板京都祇園会山鉾祭礼由来」(明治23年)などの資料が展示されます。

近代化に伴う課題に対応するため、山鉾町が集団化して連合組織を作る動きが生まれました。これが後の「祇園祭山鉾連合会」設立につながっていきます。本展示では、伝統行事が近代社会に適応していくための工夫と努力、そして京都の人々の祭りへの深い愛着が感じられる資料の展示が予定されています。連合会設立に至る経緯については、6月27日に関連講座が開催されます。

視覚資料に見る祇園祭

祇園祭の姿を伝える視覚資料も、本展示の見どころになりそうです。館蔵の「祇園祭礼図屏風」には、江戸時代の祇園祭の様子が生き生きと描かれており、当時の山鉾や祭りの賑わいが鮮やかに表現されています。また、黒川翠山(くろかわすいざん)旧蔵の「原色写真版山鉾祇園会(絵はがき)」も展示資料として予定されています。黒川翠山は、明治から昭和初期にかけて京都で活躍した写真家です。風景や寺社仏閣、名勝地を主題とした芸術的な写真を多く残しました。

これらの視覚資料を通じて、衣装や装飾、山鉾の形状、観客の様子など、時代とともに変化していく要素と、変わらず守られてきた伝統の両方を見比べるのもこの展示の楽しみ方のひとつです。特に近代以降、写真技術の発達により祭りの記録方法が大きく変化していった点も興味深いところです。展示では、こうした記録媒体の変遷からも、祇園祭が歩んできた歴史の一端を読み解く手がかりが得られるかもしれません。

ギャラリートーク

歴史資料館職員による展示解説が以下の日程で行われます。参加費無料、申込不要です。

・令和7年6月19日(木曜日)午後2時から(約40分)
・令和7年7月3日 (木曜日)午後2時から(約40分)
・令和7年7月13日(日曜日)午後2時から(約40分)

関連講座「祇園祭山鉾連合会設立に至る経緯」

・講師:村山 弘太郎氏(京都外国語大学国際貢献学部准教授、京都祇園祭の山鉾行事歴史資料調査事業実行委員会委員)
・日時:令和7年6月27日(金曜日) 午後6時から午後7時30分まで
・会場:京都市歴史資料館 1階展示室
・定員:40名(事前申込制、多数抽選)
・対象:京都市内に在住又は通勤通学の方(未就学児不可)
・参加費:1人当たり1,000円

開催情報

展示名 特別展「祇園祭 いま・むかし
主催 京都市歴史資料館
会期 令和7年6月14日(土曜日)から8月10日(日曜日)まで
開館時間 午前9時から午後5時まで
入館料 無料
休館日 月曜日、祝休日

祇園祭ってどんな祭り?

祇園祭は疫病退散を願う平安時代の御霊会が始まり

祇園祭は平安時代に京都で疫病が流行した際(869年)、国の数と同じ66本の鉾を立てて八坂神社(当時祇園社)の神輿を神泉苑へ送り、疫病退散を祈った御霊会が起源とされています。

その後、町衆が豪華な山鉾を造り競い合う形に発展しました。応仁の乱などで中断を経つつも復活を重ね、2009年には「京都祇園祭の山鉾行事」としてユネスコ無形文化遺産に登録され、今も疫病退散と地域の結束を願う京都最大の夏祭りとして続いています。

祇園祭のハイライト:山鉾巡行

祇園祭の中心行事といえば「山鉾巡行(やまほこじゅんこう)」です。これは、豪華に装飾された山車(だし)が京都の街をゆっくりと練り歩く壮麗な行列で、多くの観光客を魅了します。山車とは、日本各地の祭りで使われる、装飾を施した車両のことで、車輪のついた台の上に人形や建築物、さまざまな装飾を載せて引き回すのが特徴です。

山鉾は大きく「山」と「鉾」に分かれます。鉾は特に大きな山車で、上部に長い槍状の鉾が立てられています。一方の山は比較的小ぶりで、人の手で担いで運ばれることが多く、町ごとに異なる形式や伝統が見られます。

それぞれの山鉾には、歴史上の人物や神話、古い物語にちなんだテーマがあり、装飾には西陣織や唐織といった日本の伝統工芸のほか、海外から伝わったタペストリーや絨毯も使われています。その美しさから「動く美術館」とも称されるほどです。

見どころのひとつが、「辻回し(つじまわし)」と呼ばれる鉾の方向転換です。狭い交差点を通る際、車輪の下に竹を敷き、滑らせることで鉾を90度回転させるという、力と技術を要する場面で、観衆から大きな拍手が送られます。

この山鉾巡行は、各町内会によって支えられ、代々受け継がれてきた地域の誇りともいえる伝統行事です。住民の手によって毎年丁寧に準備され、京都の夏を彩る一大イベントとして今もなお大切に守られています。

2025年の祇園祭

祇園祭は7月1日から31日まで、京都の中心部が一か月まるごと神事の会場になる壮大な祭りです。時系列で主な行事を追ってみましょう。

1日~18日の「吉符入(きっぷいり)」で各山鉾町が安全を祈願し、2日の「くじ取り式」でくじを引いて山鉾巡行の順番を決めます(会場は京都市役所市議会議場の予定)。10日には神輿(みこし)を鴨川の水で清める「神輿洗式(みこしあらいしき)」が行われ、神様を迎える準備が整います。

14~16日は前祭の「宵山(よいやま)」と呼ばれる前夜祭です。町の通りに立ち上がった山鉾を間近で見学でき、厄除け粽や縁起物が授与され、夜は祇園囃子(ぎおんばやし)が響きます。屋台や提灯の灯りも相まって、最もにぎわう期間です。

17日は祭りのハイライト「前祭(さきまつり)山鉾巡行」が行われます。豪華に装飾された山鉾が四条烏丸‐御池通コースを進み、交差点では「辻回し」を見ることができます。夕刻には八坂神社の三基の神輿が氏子区域を巡る「神幸祭(じんこうさい)」が行われます。

21~23日は後祭の「宵山」、24日には「後祭(あとまつり)山鉾巡行」が行われ、こちらでも「辻回し」を見ることができます。同じく24日昼には舞妓や稚児が踊る「花傘巡行(はながさじゅんこう)」も加わり、夕刻には御旅所から本社へ戻る「還幸祭(かんこうさい)」が行われ、華やかな行列が続きます。

28日には再び「神輿洗式」が行われ、祭りの締めくくりは31日の「疫神社夏越祭(えきじんじゃなごしさい)」です。参拝者は茅の輪をくぐり、「蘇民将来子孫也(そみんしょうらいしそんなり)」と記した札付きの茅の輪守を受けて一年の無病息災を願います。

「祇園祭 いま・むかし」展と祇園祭の歴史・まとめ

  • 京都市歴史資料館で6月14日~8月10日開催
  • 入館料無料、月曜・祝休日は休館
  • 明治維新後の近代化と祇園祭の変遷を紹介
  • 1864年蛤御門の変が祭りの重要な転機
  • 電線・路面電車など近代インフラとの共存
  • 山鉾連合会設立で伝統行事の継続を実現
  • 江戸時代の祇園祭礼図屏風を展示
  • 黒川翠山の貴重な写真資料も公開
  • 6月27日に関連講座開催(要申込・有料)
  • 祇園祭の起源は869年の疫病退散祈願
  • 2009年ユネスコ無形文化遺産に登録
  • 山鉾は「動く美術館」と称される美しさ
  • 辻回しは前祭・後祭両方で見学可能
  • 7月1日~31日まで一か月間の壮大な祭り