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2026.05.26

京都秀吉の時代―土の中から―レビュー 発掘成果でたどる豊臣秀吉と京都の都市改造

大河ドラマ「豊臣兄弟」をきっかけに、豊臣秀吉と京都の関係に関心を持つ人も多いと思います。今回紹介する『京都秀吉の時代―土の中から―』は、京都市考古資料館で開催された特別展「京都秀吉の時代」に関連する書籍です。図録ではありませんが、発掘現場や遺物の写真、昔の絵図、復元図、散策ガイド・マップが収録されており、図録を読む感覚で楽しめる一冊です。

-・- 目次 -・-
  • 京都秀吉の時代―土の中から―
    • 戦国時代の朝廷と貴族
    • 織田信長の京都支配
  • 書籍の見どころ
    • 豊臣秀吉と京都
    • 妙顕寺城・聚楽第・京都新城
    • 天正地割と町並みの変化
    • 三条界隈の茶陶と焼物商
    • 巻末の散策ガイド・マップ
  • 書籍の詳細と読後の感想
    • 書籍情報
    • 書籍 目次
    • 書籍を読み終えて

京都市考古資料館の特別展「京都秀吉の時代」 関連書籍「京都秀吉の時代―土の中から―」の表紙  撮影:junk-word.com(爆点日本史編集部)
京都市考古資料館の特別展「京都秀吉の時代」 関連書籍「京都秀吉の時代―土の中から―」の表紙 撮影:junk-word.com(爆点日本史編集部)

京都秀吉の時代―土の中から―

『京都秀吉の時代―土の中から―』は、聚楽第、御土居、伏見城、方広寺、天正地割、茶陶など、秀吉期の京都を発掘調査の成果からたどる書籍です。全ページカラーで、遺物写真や発掘現場の写真を確認しながら読み進められます。巻末には散策ガイド・マップもあり、読後に京都の町を歩くときの手がかりにもなります。

戦国時代の朝廷と貴族

秀吉の京都政策を読む前に押さえておきたいのが、戦国時代の京都には、武家権力だけでは動かせない層があったという点です。京都には天皇を中心とする朝廷があり、公家たちが儀式、官位、家職、文化を支え、さらに寺社勢力も都市の中で大きな存在感を持っていました。

応仁の乱以後、京都は長い戦乱の影響を受け、朝廷も財政的に厳しい状況に置かれました。正親町天皇は弘治3年(1557年)に皇位を継承しましたが、朝廷の困窮によりすぐには即位の礼を行えず、永禄3年(1560年)に毛利元就の献金を受けて即位の礼を行ったとされています。戦国大名の力が強まる一方で、天皇や朝廷の権威はなお政治的な意味を持ち続けていました。

そのため、京都を支配することは、町を軍事的に押さえるだけでは終わりません。朝廷や公家との関係をどう築くか、寺社をどう位置づけるか、都市空間をどのように整えるかが問われました。秀吉が内裏の修復や公家屋敷町の整備を進めたことも、この文脈で見ると理解しやすくなります。

本書で扱われる聚楽第、京都新城、天正地割、寺町・寺之内、御土居などは、城や町割りの話であると同時に、京都という複雑な都市をどう再編するかという問題にもつながっています。秀吉の時代の京都を見るには、合戦の勝敗だけでなく、朝廷・公家・寺社が残る都の性格を意識しておくことが大切です。

織田信長の京都支配

秀吉が京都を大きく変えていく前段階には、織田信長の上洛と京都支配があります。永禄11年(1568年)、信長は足利義昭を奉じて京都へ入りました。三好勢を退けたのち、義昭は征夷大将軍となり、信長の軍事力を背景に室町幕府の秩序回復が進められます。

ただし、信長の京都支配は、上洛した瞬間に安定したわけではありません。京都では治安維持、訴訟処理、町の管理、朝廷や公家との調整が必要でした。木下藤吉郎、村井貞勝、明智光秀らが政務に関わり、軍事と行政の両面から都を押さえていきます。信長期の京都統治については「織田信長は上洛後に京都をどう統治した?奉行の配置と堺会合衆への矢銭2万貫要求」で詳しく解説しています。

信長と足利義昭の関係は、やがて対立へ向かいます。天正元年(1573年)に義昭が京都を追われると、室町幕府のあり方は大きく変わりました。信長は本能寺の変で倒れるまで、京都とその周辺を重要な政治・軍事の舞台として動き続けます。

この流れを押さえると、本書の主役である秀吉の京都政策が見えやすくなります。秀吉は信長の死後、山崎の戦いを経て政権の中心へ進み、やがて聚楽第、伏見城、御土居、天正地割などを通じて、京都の姿に大きな手を入れていきました。信長の京都支配は、秀吉が京都を再編する前史として読むことができます。

書籍の見どころ

豊臣秀吉と京都

本書の中心にあるのは、秀吉が京都をどのように位置づけ、どのように変えていったのかという視点です。本能寺の変後、備中高松城から引き返した秀吉は、山崎の戦いで明智光秀を破り、天下人への道を進み始めます。

その後の京都では、聚楽第、内裏修復、公家屋敷町、寺町・寺之内、天正地割、御土居、方広寺、伏見城、淀城、街道や淀川水運の整備など、多方面にわたる事業が行われました。

読みどころは、これらの事業を年表的に追うだけでなく、遺跡や遺物を通して見ていける点です。京都は天皇・公家・寺社が存在する政治都市であり、東国と西国を結ぶ位置にもありました。本書では、秀吉にとって京都がなぜ重要だったのかを、都市の構造や出土資料から考えられるようになっています。

秀吉を合戦や出世の人物として見るだけでなく、京都の町を再編した人物として読み直せるところが、この書籍の大きな魅力です。聚楽第や伏見城だけを個別に見るのではなく、京都全体を舞台にした政策としてつなげて読めます。

妙顕寺城・聚楽第・京都新城

本書では、秀吉が京都に築いた三つの居城として、妙顕寺城、聚楽第、京都新城が紹介されています。聚楽第はよく知られていますが、妙顕寺城や京都新城まで並べて扱うことで、秀吉の京都における拠点づくりを段階的に見られます。

妙顕寺城は、本能寺の変後に秀吉が京都支配の拠点とした場所です。発掘調査では、舟入の可能性がある遺構や荷札木簡が確認されており、堀川の水運との関係を考える手がかりになります。

聚楽第では、絵図に描かれた内郭・外郭の構造や、発掘調査で見つかった堀跡、石垣跡、金箔瓦などから、現在は失われた城郭の姿を追っていきます。

京都新城は、秀吉が秀頼のために造営を始めた居城・邸宅です。聚楽第が破却された後の京都における秀吉の拠点として扱われ、京都御苑周辺の発掘成果とも結びつけられています。地上に大きな建物が残っていない場所でも、地名、地形、堀跡、出土品を組み合わせて考える楽しさがあります。

聚楽第だけを知っている人ほど、この章は読み応えがあります。秀吉が京都に置いた拠点を複数の段階で見られるため、政権の動きと都市空間の変化を重ねて理解しやすくなります。

天正地割と町並みの変化

京都の町並みに関心がある人におすすめしたいのが、天正地割を扱う箇所です。戦国時代の京都は、平安京以来の街路と街区を引き継ぎながら、上京と下京を中心にまとまっていました。そこへ秀吉が新しい街路を通し、町の区画を変えていきます。

本書では、御土居に囲まれた内側に、聚楽第を中心とする武家屋敷、内裏を中心とする公家屋敷、寺町通や寺之内通沿いの寺院群が置かれていく流れが紹介されています。平安京以来の碁盤目状の街区に新たな南北街路が入り、正方形に近かった区画が長方形へ変わっていく様子は、現在の京都の通りを歩くときにも意識したくなる内容です。

黒門通、岩上通、釜座通、衣棚通、間之町通、堺町通など、今も京都に残る通りの名が出てくるため、歴史の話が現地の地図とつながります。巻末の散策ガイド・マップと合わせて読むと、書籍の中で学んだ町割りを実際の京都散策に活かせます。

城や寺院だけでなく、町そのものが歴史資料になることを感じられる章です。秀吉期の都市改造を、通りと区画の変化から読みたい人に向いています。

三条界隈の茶陶と焼物商

桃山文化に関心がある人には、三条界隈の茶陶と焼物商を扱う箇所が読みどころになります。御幸町通と柳馬場通の間の三条通沿いでは、桃山茶陶がまとまって見つかった場所が複数あり、弁慶石町、中之町、下白山町、福長町などの調査成果が紹介されています。

出土品には、備前、信楽、伊賀、丹波、唐津、志野、黄瀬戸、瀬戸黒、美濃、朝鮮、中国、東南アジア産の焼物など、多様な地域の製品が含まれています。中之町では、復元可能な三分の一以上の破片で数えると1500点近くの茶陶があったとされ、桃山期の焼物がどれほど広く流通していたのかを考える材料になります。

本書で面白いのは、茶陶を名品鑑賞だけで終わらせず、商品としての流通や商家の存在へつなげている点です。使用痕が少ない出土品や、美濃の窯道具、窯道具が付いたままの製品などから、三条界隈に焼物を扱う商人がいた可能性を読み取っていきます。

茶の湯、流通、南蛮貿易、洛中の商業が重なるため、文化史が好きな人にも、発掘資料から都市の暮らしを読みたい人にも向いています。器の写真を眺めながら読むことで、桃山文化を生活と商売の側から見ることができます。

巻末の散策ガイド・マップ

本書ならではの実用的な魅力が、巻末の散策ガイド・マップです。聚楽第と大名屋敷、洛中、東山界隈、伏見城、関連遺跡全体マップなどが用意されており、地図と史跡・建築物の写真を合わせて確認できます。

秀吉期の京都は、地上に建物が残っていない場所も多くあります。そのため、現地を歩くときには、現在の町名、地形、石碑、寺社、通りの位置を手がかりにする必要があります。巻末のマップは、その作業を助けてくれる資料です。

本文で読んだ聚楽第、伏見城、方広寺、天正地割などを、現在の京都へ結び直せるところが便利です。読んで終わるだけでなく、京都散策の下調べにも使えるため、歴史散歩が好きな人は巻末までしっかり見ておきたい書籍です。

書籍の詳細と読後の感想

書籍情報

書籍名 京都秀吉の時代―土の中から―
監修 公益財団法人京都市埋蔵文化財研究所 京都市考古資料館
発行 ユニプラン
発行日 2010年10月1日 第1版第1刷発行
ページ数 64頁
価格 1,200円

書籍 目次

秀吉の時代の京都
織田信長と京都
妙顕寺城と聚楽第
天正地割
御土居
伏見城
淀城
二条城
方広寺
寺院の整備成果
茶陶
南蛮貿易
散策ガイド・マップ
聚楽第と大名屋敷
洛中1
洛中2
東山界隈
伏見城
関連遺跡全体マップ

書籍を読み終えて

『京都秀吉の時代―土の中から―』は、秀吉期の京都を発掘成果から見ていける書籍です。発掘現場や遺物の写真が多数収録されており、文字だけでは想像しにくい遺構や出土品の雰囲気を確認しながら読み進められます。

昔の絵図や復元図も掲載されているため、現在は姿をとどめていない聚楽第や、都市改造によって変化した京都の姿を考える助けになります。全ページカラーなので、金箔瓦、茶陶、発掘現場の写真も見やすく、資料を眺める楽しさがあります。

図録ではなく書籍として発行されていますが、内容の密度や写真の多さは図録好きにも合います。豊臣秀吉の時代を、城、町割り、寺社、茶陶、流通、散策マップまで広げて読める一冊です。

展示を観覧した人へ

展示で見た遺物やパネルの内容を、帰宅後に整理する復習用として役立ちます。発掘写真、出土品写真、絵図、復元図を見返せるため、会場では追いきれなかった細部を自分のペースで確認できます。巻末のマップを使えば、展示で知った遺跡を実際の京都散策へつなげられます。

展示を観覧していない人へ

展示を見ていなくても、秀吉が京都で進めた都市改造を知る入口として読みやすい書籍です。聚楽第、伏見城、御土居、方広寺、天正地割、茶陶など、テーマごとに京都の変化を追えるため、大河ドラマをきっかけに秀吉へ関心を持った人にも向いています。

おすすめしたいのは、次のような人です。

  1. 豊臣秀吉と京都の関係を知りたい人
  2. 聚楽第、伏見城、御土居、方広寺に関心がある人
  3. 発掘調査から歴史を読む本が好きな人
  4. 京都散策の前に、秀吉期の町並みを押さえたい人
  5. 写真や図版を見ながら歴史書を読みたい人

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