Webデザインを学ぶ前に、「そもそもWebデザイナーってどんな仕事?」と疑問に思う人は多いでしょう。見た目を整えるだけの仕事と思われがちですが、実際には"情報を整理し、伝えるための設計"が中心です。この記事では、Webデザイナーの役割や制作チームの仕組み、仕事の流れをわかりやすく解説します。
- Webデザイナーの仕事とは何か?
- 見た目ではなく"目的を設計する"のがデザイナー
- UI/UXという考え方が求められる時代
- クライアントの想いを"伝わる形"に翻訳する
- チームでつくるWebサイト|関わる職種と役割
- 全体をまとめる「Webディレクター」
- 見た目と構成を形にする「Webデザイナー」
- 仕組みを実装する「フロントエンドエンジニア(コーダー)・バックエンドエンジニア」
- Webサイトが完成するまでの流れ
- ① 企画・設計:目的とターゲットを明確にする
- ② デザイン制作:見た目と使いやすさを形にする
- ③ コーディング・公開:デザインを動かし、世に出す
- Webデザインの本質とは?課題解決と情報設計の視点
- デザインとは"問題を解く手段"である
- 情報設計(IA)こそ、デザインの土台になる
- ツールよりも"考える力"がデザインを決める
Webデザイナーの仕事とは何か?
Webデザイナーという職業をひとことで表すなら「情報をわかりやすく伝えるための設計者」です。見た目の美しさを追求するだけではなく、目的を達成するために「どうすれば伝わるか」を考える仕事です。ここでは、Webデザインの本質を3つの視点から整理してみましょう。
見た目ではなく"目的を設計する"のがデザイナー
多くの人が「Webデザイナー=おしゃれなサイトを作る人」と考えがちですが、実際はそれだけではありません。企業のサイトであれば商品の魅力を伝え、問い合わせや購入につなげることが目的です。学校のサイトなら、保護者や生徒が必要な情報を迷わず見つけられることが大切です。
つまりWebデザイナーは「装飾」ではなく「目的達成のための設計」を行う仕事です。どんな情報をどの順番で見せるか、ボタンの配置や色はどのようにすればユーザーが迷わないか─これらを考えるのが真のデザインです。見た目の良さは、その設計を支える結果に過ぎません。
UI/UXという考え方が求められる時代
近年では「UI/UXデザイン」という言葉をよく耳にします。UIはユーザーインターフェース(画面の見た目や操作要素、状態遷移など)、UXはユーザーエクスペリエンス(体験)のこと。つまり、サイトを訪れた人が「見やすい」「使いやすい」「気持ちいい」と感じる流れを作るのがUI/UXデザインです。
たとえば、スマホサイトのボタンを親指で押しやすい位置に配置する。あるいは、必要な情報に迷わず到達できるように導線や検索性を設計する。これらはすべてUXを意識したデザインです。Webデザイナーは見た目を整えるだけでなく、ユーザーの行動をデザインする仕事へと進化しています。
クライアントの想いを"伝わる形"に翻訳する
Webデザイナーは、クライアントとユーザーの間をつなぐ翻訳者でもあります。クライアントは「商品を売りたい」「ブランドを広めたい」と考えていますが、ユーザーが求めるのは「自分にとって役立つ情報」や「信頼できるサービス」です。そのギャップを埋めるのがデザインの役割です。
「誠実さを伝えたい」という抽象的な要望を受けたとき、淡い配色や余白を多めに使ったデザインで落ち着きを演出する─これも翻訳の一つです。言葉にできない想いを視覚で伝える力が、Webデザイナーの価値です。技術やツールだけではなく、人の感情を読み取る感性も求められるのです。
チームでつくるWebサイト|関わる職種と役割
Webサイトは1人で作るものではありません。実際の現場では、ディレクター・デザイナー・エンジニアなど、複数の専門職が連携して1つのサイトを完成させます。それぞれの役割を理解しておくと、学習を始めたときに「自分はどの部分を担当しているのか」が明確になります。
全体をまとめる「Webディレクター」
Web制作の最初に登場するのが、プロジェクト全体を統括するWebディレクターです。クライアントの要望を整理し、目的やターゲットを明確にする役割を担います。「なぜこのサイトを作るのか」「どんな人に何を伝えるのか」を最初に決めるのがディレクターの仕事です。
また、デザイナー・エンジニアなど各担当者のスケジュールを調整し、納期に間に合うよう全体を管理します。いわば"制作チームの指揮者"です。デザイナーが良いデザインを作るためには、ディレクターが正確な方向性を示してくれることが欠かせません。
見た目と構成を形にする「Webデザイナー」
Webデザイナーは、ディレクターが定めた目的やコンセプトをもとに、サイトのビジュアルやレイアウトを作る担当です。見た目の美しさだけでなく、ユーザーが使いやすく理解しやすい構成を考えます。
実際の業務では、ワイヤーフレーム(構成図)を作成し、FigmaやPhotoshopでデザインカンプを制作します。色やフォント、ボタンの形など、細部のルールを統一する設計力も求められます。デザイナーの成果物が、エンジニアの手によって実際に動くWebサイトへと変わっていきます。
仕組みを実装する「フロントエンドエンジニア(コーダー)・バックエンドエンジニア」
フロントエンドエンジニアは、デザイナーが作成したデザインカンプをもとに、HTML・CSS・JavaScriptでブラウザ上に再現します。アクセシビリティやパフォーマンス、コンポーネント設計、ビルド/テストなども担当範囲に含まれることが多く、CMS構築や基本的なプログラミング知識も求められます。
バックエンドエンジニアは、さらに裏側の仕組みを作る技術者です。会員登録や検索機能、ECサイトの決済などの機能を支えるサーバーやデータベース、API、認証などを担います。デザイナーが設計する「見える部分のデザイン」と、フロントエンドエンジニアが実装する「インターフェース」、バックエンドエンジニアが構築する「見えない仕組み」が合わさって、初めてひとつのWebサイトが動き出します。
Webサイトが完成するまでの流れ
Webサイトはアイデアを思いついてすぐに作れるわけではありません。目的の整理から始まり、設計・デザイン・実装・公開まで、いくつもの工程を経て完成します。この流れを理解しておくことで、どの段階で何を学ぶべきかが見えてきます。
① 企画・設計:目的とターゲットを明確にする
まず最初に行うのは企画と情報設計です。ここでは「なぜ作るのか」「誰のために作るのか」「どんな情報を伝えるのか」を整理します。目的があいまいなまま進めると、デザインや文章がぶれてしまい、最終的に誰にも響かないサイトになってしまうからです。
実際の現場では、ディレクターがクライアントと打ち合わせを行い、サイトの方向性を定めます。ターゲットユーザーを設定し、ページ構成(サイトマップ)や情報の流れ(ワイヤーフレーム)を作成するのもこの段階です。デザイナーはこの設計をもとにビジュアルを考え始めます。
② デザイン制作:見た目と使いやすさを形にする
設計が固まったら、次はデザイン制作の工程です。FigmaやPhotoshopなどのツールを使い、レイアウト・配色・フォント・写真などを組み合わせて、実際の見た目を作ります。この段階では「見た目の美しさ」よりも「使いやすさ」と「目的達成」を意識することが大切です。
たとえば、資料請求ボタンを目立つ位置に配置したり、スマホでも読みやすいフォントサイズを選んだりといった工夫を行います。これが"UI/UXデザイン"の実践です。ここで作られるのが「デザインカンプ(完成イメージ)」で、次の工程でフロントエンドエンジニアがそれをもとにWeb上で再現していきます。
③ コーディング・公開:デザインを動かし、世に出す
完成したデザインをWeb上で実際に動かす工程がコーディングです。HTMLで構造を作り、CSSで装飾を加え、JavaScriptで動きをつけます。スマホとパソコンの両方に対応させるレスポンシブデザインは、設計段階でのブレークポイントやレイアウト設計を踏まえつつ、実装で具体化されます。
その後、テストサーバーで動作確認を行い、問題がなければ公開です。ドメインを設定し、サーバーにデータをアップロードすることで、世界中からアクセスできるようになります。公開後も、アクセス解析を見ながら改善を重ねるのがWebサイト運用の重要な仕事です。
Webデザインの本質とは?課題解決と情報設計の視点
Webデザインを学び始めると、色やフォントなどの「見た目」に目が行きがちです。しかし、デザインの本質は「見た目を整えること」ではなく、「情報を正しく伝えること」にあります。ここでは、Webデザイナーが最も大切にしている"課題解決"と"情報設計"という視点を紹介します。
デザインとは"問題を解く手段"である
デザインとは、課題に対する「答え」を見つける行為です。商品の売上が伸びないという課題に対して、「ユーザーが欲しい情報を見つけにくい」「ボタンがわかりづらい」などの原因を探り、それを改善する─それがデザインの出発点です。
つまり、Webデザイナーは"見せ方の専門家"ではなく、"伝え方の設計者"です。見た目を整える前に、「このページで解決したい問題は何か?」を常に考える姿勢が重要です。ツールの操作よりも先に、この思考の習慣を身につけることで、デザインの質は大きく変わります。
情報設計(IA)こそ、デザインの土台になる
Webサイトは情報でできています。どんなに美しいデザインでも、情報が整理されていなければ使いにくくなります。そこで重要なのが情報設計(Information Architecture)です。これは「どんな情報を、どんな順序で、どう見せるか」を考える工程です。
ECサイトなら「商品を探す→比較する→購入する」という流れをスムーズに導く必要があります。メニューの位置、ボタンの大きさ、ページ遷移の少なさ─これらはすべて情報設計の一部です。デザインは、この情報の地図をもとに組み立てられるのです。
ツールよりも"考える力"がデザインを決める
最近はFigmaやCanvaなど便利なツールが増え、誰でも簡単に見栄えの良いデザインを作れるようになりました。しかし、ツールの操作を覚えるだけでは「見た目は整っているけれど、なぜそうしたのか説明できないデザイン」になりがちです。
大切なのは、ツールを使う前に「なぜこの構成にしたのか」「どんな行動を促したいのか」を説明できる思考力です。プロのデザイナーは常に"目的"を意識して手を動かしています。操作を学ぶよりも前に、この考え方を理解しておくことが、最短の上達法といえるでしょう。
Webデザイナーってどんな仕事?のまとめ
- Webデザインは「見た目づくり」ではなく「目的設計」
- ディレクターは全体をまとめる司令塔
- デザイナーは情報を整理して形にする設計者
- フロントエンドエンジニア(コーダー)はデザインをWeb上で動かす職人
- バックエンドエンジニアは裏側の仕組みを作る技術者
- 制作は企画→デザイン→コーディング→公開の流れ
- 最初に目的とターゲットを明確にすることが重要
- デザインは課題解決のための手段である
- 情報設計がWebサイトの使いやすさを左右する
- ツールよりも考える力がデザインの質を決める
- "なぜそうするのか"を説明できるデザイナーを目指す