情報設計やワイヤーフレームは難しそうに聞こえますが、どちらも"ユーザーが迷わないように情報の道筋を整える作業"です。Webデザイナーを目指す初心者にとって、最初に身につけておきたい基礎でもあります。本記事では、情報の整理から階層構造、ユーザーフロー、ワイヤーフレームへの落とし込みまでを順を追ってわかりやすく解説します。この記事を読み終える頃には、使いやすいデザインの土台がどのように作られるのか、その全体像が自然とつかめるはずです。
- 導入:情報設計が「使いやすさ」を決める理由
- 情報設計がUXに影響する理由
- デザイン前に整理すべき情報範囲
- 迷わない導線を作るための視点
- 情報設計(IA)の基本概念
- IAとは何か
- Webサイトにおける情報構造の考え方
- ユーザーとビジネスの両面から整理する
- コンテンツ整理と階層構造の作り方
- コンテンツの洗い出し(カードソート)
- グルーピングと優先順位付け
- 階層構造図(サイトマップ)の作成
- ユーザーフローで"動線"を可視化する
- ユーザーフローとは
- 典型的なUIフローのパターン
- 目標達成までのステップを整理する
- ワイヤーフレームの基礎
- ワイヤーフレームの役割と目的
- ローフィ(低解像度)とハイフィ(高解像度)の違い
- 基本レイアウトパーツ(ヘッダー/ナビ/コンテンツ/フッター)
- UIパターンごとのワイヤー例(リスト・フォーム・カード)
- IAとワイヤーフレームをつなぐ実践プロセス
- 要件整理 → IA → ワイヤーの流れ
- ワイヤーフレーム作成のポイント
- レビュー・改善の進め方

導入:情報設計が「使いやすさ」を決める理由
情報設計とは、UI(ユーザーインターフェイス:ユーザーとシステムをつなぐ接点)をつくる前の骨組みの準備です。この骨組みが整うほど、ユーザーの迷いを減らし、デザイン全体の理解しやすさが高まります。
情報設計がUXに影響する理由
ユーザーがストレスを感じる瞬間の多くは、デザインそのものではなく「どこへ進めばいいか分からない」という迷いから生まれます。目的の情報が見つからず、操作の流れが途切れてしまうと、その時点でUX(ユーザーエクスペリエンス:ユーザー体験)は損なわれてしまいます。
しかし、情報の配置や関係性がしっかり整理されていれば、ユーザーは「進むべき方向」を自然と読み取ることができます。視覚的に目立たなくても、迷うことのないスムーズな体験は、最終的に高い評価につながるのです。
このことから、情報設計の質は、最終的なビジュアルデザイン以上に、ユーザー体験を大きく左右する極めて重要な工程だと言えるでしょう。
デザイン前に整理すべき情報範囲
情報設計の工程では、まずサイトに載せるべき情報をすべて洗い出すことから始めます。ここで対象となるのは、文章や画像、機能だけではありません。ユーザーが辿るであろう行動や、ビジネス側がこのサイトで達成したい目的も含めて、一覧化することが重要です。
次に、洗い出した情報の中から、似ているものをグループに分け、優先順位をつけていきます。これは、ユーザーにとって「最初に知りたい情報は何か」「後から読めばよい情報は何か」といった視点で、情報の重要度を整理する作業です。
もし、この段階での整理が不十分なまま次のステップに進んでしまうと、後のUI制作で「どこに置くべきか分からない」要素が大量に発生し、最終的に情報構造が破綻してしまいます。
情報を並べ始める前に徹底的に整理することは、デザインプロセスをスムーズに進め、質の高いUXを実現するための必須工程と言えるでしょう。
迷わない導線を作るための視点
使いやすいと評価されるサイトには、ある共通した特徴があります。それは、ユーザーが次に取るべき行動を迷わず選べるよう、情報の並びに一貫したルールが適用されていることです。
カテゴリ名、階層の深さ、そしてリンクの配置といった要素にルールと秩序が生まれると、ユーザーの迷いは解消されます。導線が自然に整備されていれば、ユーザーは立ち止まって考え込むことなく、スムーズに目的へ進むことができるでしょう。
これは、「説明しなくても伝わるデザイン」と言い換えられます。つまり、情報構造のわかりやすさこそが、そのままサイトの使いやすさへと直結する理由なのです。
その結果、目的到達までの時間が短縮され、ユーザーの評価も安定して向上します。情報設計は、画面上で目立つ存在ではありませんが、UXを支える最も確かな基盤として機能しているのです。
情報設計(IA)の基本概念
IAとは、サイトの情報を「どこに」「どの順番で」配置するかを決める設計図のようなものです。UIの前に、まず全体の骨組みを整えます。
IAとは何か
IA(Information Architecture:情報設計)とは、情報をわかりやすく配置し、利用しやすい構造を組み立てるための考え方です。
これを家づくりに例えるなら、間取りを決める段階にあたります。家具の配置を決める前に、家族の生活動線を考慮して設計図を描くのと同じです。
IAが整理されていると、ユーザーがサイト内で迷う場面は劇的に減り、提供されている情報や機能への理解が早まります。逆に、IAを固めずにビジュアルデザインを進めてしまうと、後から「置き場所のない情報」が次々と生まれ、構造そのものが崩壊しやすくなるというリスクを伴います。
そのため、IAはUI制作に入る前に必ず固めておくべき基本方針であり、優れたUXを構築するための基盤となる工程なのです。
Webサイトにおける情報構造の考え方
サイトの情報構造を作る際に重要なのは、情報同士の関係性を見える化することです。親ページ、子ページ、そして関連ページといったつながりを整理することで、どの情報が重要で、どこに配置すべきかが明確になります。
また、ユーザーがどのページを入口としてアクセスしても迷わない構造にするには、階層を深くしすぎないことも大切です。多くのユーザーは訪れたサイトの階層を理解していないので、構造が複雑になると迷いやすくなってしまうからです。
情報が整理されシンプルになるほど、サイトは読みやすく、軽快な印象を与え、逆に構造が複雑だと、最初の印象で使いにくさを感じさせてしまいます。
ユーザーとビジネスの両面から整理する
情報設計では、ユーザーが求める情報と、ビジネス側が伝えたい情報のどちらも整理する必要があり、どちらか一方だけに寄ると、構造にゆがみが生まれます。
まず考えるべきなのは、ユーザーが「最初に知りたいこと」と、ビジネスとして「最初に伝えるべきこと」が一致しているかどうかです。この一致点が少ないほど、ユーザーは迷いやすく、ビジネス側の意図も届きにくくなります。
一致していない場合は、情報の出す順番を調整したり、補足リンクを設けたりして、両者の意図がぶつからない配置に組み直します。これが、ユーザーにとってわかりやすく、ビジネスにも無理のない情報構造をつくる基本です。
コンテンツ整理と階層構造の作り方
情報設計の第一歩は、サイトに載せる情報を「全部見える化」することです。何があり、何が足りなくて、どれが重要なのか─整理を進めるほど、サイトの骨格がくっきりしてきます。
コンテンツの洗い出し(カードソート)
まずは、コンテンツの"棚卸し"をしましょう。既存サイトならすべてのページを抜き出し、新規サイトなら必要になりそうな情報を書き出していきます。文章、画像、FAQ、サービス紹介、問い合わせ導線─どんな小さな要素も一度机の上に並べます。
この段階で大切なのは、「細かく整理しようとしないこと」。最初から分類しようとすると、判断が止まりやすくなり、洗い出しが不十分になります。まずは気づいたものを並べるだけで十分です。
ある程度出そろったら、関連しそうなカード同士を自然に近づけます。これが簡易的なカードソートです。グループが見えてくると、サイトの情報のかたまりがはっきりし始めます。
グルーピングと優先順位付け
洗い出した情報をグルーピングしていくと、それぞれの役割が見えてきます。「サービスを理解してもらうための情報」「購入に必要な情報」「信頼を補強する情報」など、目的に応じて情報の性質が分かれます。
ここで軸になるのは、ユーザーが最初に知りたい順に並べられているか です。ビジネス側が伝えたい順番と、ユーザーが知りたい順番がズレていることはよくあります。そのズレを埋める作業が優先順位付けの中心になります。
優先度の高い情報はページの上段や最初の階層に配置し、補足情報は下段や深い階層へ。こうした整理を行うことで、情報の配置と重みづけが整い、次の工程で迷いが減ります。
階層構造図(サイトマップ)の作成
グルーピングと優先順位が固まったら、それらを階層構造として配置します。ここでの目的は、ユーザーがどこにいても全体の位置関係を理解できるようにすることです。
階層を作る際は、基本的に2~3階層以内に収めることを意識します。深すぎる階層は、どこに何があるか見失いやすく、戻る操作も複雑になります。トップ → カテゴリ → 詳細 のように、迷いにくいシンプルな階層が理想です。
また、似ている情報が別カテゴリに分散していないか、逆にひとつのカテゴリに詰め込みすぎていないかを確認します。階層構造は、情報設計の地図になる部分です。ここが明確になると、すべてのページがどこにつながるかが理解しやすくなります。
ユーザーフローで"動線"を可視化する
ユーザーがどう動き、どの順番で目的に向かうのか。その流れを可視化したものがユーザーフローです。情報設計が"静"の整理なら、ユーザーフローは"動"の整理。どちらも欠かせない軸になります。
ユーザーフローとは
ユーザーフローは、ユーザーが目的を果たすまでの一連の行動を、図として整理したもので、ページ単位ではなく、「どの順番で」「どの情報を見ながら」前へ進むのか─動線の流れをつかむ工程です。
UIの見た目を整える前に、この動線をつかんでおくと迷いやすいポイントが早い段階で見えてきます。逆に、ユーザーフローを作らずにUIを作り始めると、後で「この導線では進みにくい」という違和感が出ます。
ユーザーフローは、サイトの歩きやすさを確認するための地図のような役割を持っているのです。
典型的なUIフローのパターン
ユーザーフローには、いくつか代表的なパターンがあります。多くのサイトは、以下の流れのいずれか、または組み合わせで構成されています。
● 情報探索型(例:ブログ、メディア)
トップ → カテゴリ一覧 → 記事一覧 → 記事詳細。
ユーザーは"探しながら進む"ため、戻りやすい導線が重要。
● 購入/申込み型(例:ECサイト、サービスLP)
トップ → 商品(サービス)一覧 → 詳細ページ → カート → 購入。
決済までの手順が多いため、迷わせない案内が不可欠。
● 手続き型(例:会員登録、予約フォーム)
案内ページ → 入力フォーム → 確認 → 完了。
途中離脱が起きやすく、情報量と操作回数のバランス重視。
自分のサイトがどのパターンに近いのかを理解すると、最適な導線の形が見えてきます。
目標達成までのステップを整理する
ユーザーフローを作るときに最も大切なのは、「ユーザーにとって合理的な順番になっているか」を確認することです。たとえば、購入前に必要な情報が抜けていたり、別ページに分散していたりすると、ユーザーは途中で離脱しやすくなります。
流れを整理する際には、次の3つの視点が役立ちます。
① このステップは本当に必要か?
手順が多いと途中離脱が増えます。不要なステップは潔く削る。
② この順番はユーザーにとって自然か?
ビジネス側の都合ではなく、"知りたい順番"に合わせることが重要。
③ 迷いやすいポイントはどこか?
クリック先が想像しにくい場所があれば、ラベル名やUIで補う。
これらを見直すだけで、ユーザーの動線は想像以上に滑らかになります。フローのつまずきが減るほど、目的達成率は自然と上がっていきます。
ワイヤーフレームの基礎
ワイヤーフレームは、完成したデザインの"ひとつ手前"にある設計図のようなものです。情報の並びや構成を形にしていくステップで、ここが整うとUIづくりが一気に進めやすくなります。
ワイヤーフレームの役割と目的
ワイヤーフレームの目的は、デザインの"中身と構造"を確かめることです。色や装飾に入る前に、必要な情報がどの位置にあり、どんな順番で並ぶのかを確認します。
特に重要なのは、以下の3つの視点です。
① ユーザーが読み進めやすい流れになっているか
情報の順番や要素の配置が自然かどうかを見る。
② 必要な情報が抜け落ちていないか
前の工程で整理した情報構造と照らし合わせながら確認。
③ UIとして成立する機能がそろっているか
ボタンや入力欄など、操作に必要な要素が揃っているかをチェック。
ワイヤーの段階で判断できれば、後工程での修正は大きく減ります。デザインの方向性を固めるための"確認と検証"の工程と捉えると良いです。
ローフィ(低解像度)とハイフィ(高解像度)の違い
ワイヤーフレームには、ざっくり構造を見るための「ローフィ」と、完成に近い形を確認する「ハイフィ」の2種類があります。目的が違うため、作り方の解像度も変わります。
● ローフィ(Low Fidelity)
四角や線だけを使って、大まかな構造と情報の流れを確認する段階です。装飾は入れず、骨組みだけを素早く共有したいときに役立ちます。スピード重視で作るため、判断の土台を早く整えることができます。
● ハイフィ(High Fidelity)
実際のデザインに近い見た目で、UIの細部を確認する段階です。文字数、ボタンの文言、余白、画像の扱い─細かい判断が必要になります。最終的な完成形に近いので、関係者との共通認識が揃いやすくなります。
多くのプロジェクトでは、まずローフィで方向性を固め、必要に応じてハイフィへと進めます。段階的に解像度を上げることで、思考の整理と合意形成がスムーズになります。
基本レイアウトパーツ(ヘッダー/ナビ/コンテンツ/フッター)
ワイヤーフレームを組み立てるときは、ページを大きく4つのパーツに分けると考えやすくなります。
① ヘッダー
ロゴやグローバルナビが入る部分。ユーザーが迷わないように、最低限の導線をまとめる。
② ナビゲーション
サイト全体の構造を示す案内役。カテゴリの並びやラベル名のわかりやすさが、そのまま使いやすさに直結。
③ コンテンツエリア
ページの中心となる部分。文章、画像、リスト、フォームなど、ページの目的に応じた要素が入る。
④ フッター
補足情報やサイト全体の導線をまとめる場所。信頼性の高い情報(会社概要、問い合わせ、利用規約など)が入る。
この4つを整理しながらワイヤーを作ると、どんなページでも迷いのない構成になりやすくなります。
UIパターンごとのワイヤー例(リスト・フォーム・カード)
ワイヤーフレームは、ページの種類によって意識すべきポイントが変わります。よく使われるUIパターンを例に見ていくと、判断基準がつかみやすくなります。
● リスト型(記事一覧や商品一覧など)
情報量のバランスが重要です。タイトル、日付、価格、画像など、どの情報を一覧で見せるかを決めることで、ユーザーの探索効率が大きく変わります。
● フォーム型(問い合わせ、会員登録など)
入力項目が多いと離脱が増えるため、本当に必要な項目だけに絞ります。項目名、説明文、エラー表示の位置など、ユーザーの負担を減らす工夫が求められます。
● カード型(ニュース、特集、リンク集など)
情報をひとかたまりとして見せるときに便利です。画像とテキストの比率、余白の取り方によって、読みやすさと視線の流れが大きく変わります。
こうしたUIパターンの基本を押さえておくと、どんなページでもワイヤーの判断が早くなります。
IAとワイヤーフレームをつなぐ実践プロセス
情報を整理し、動線を整えたら、次はそれらをUIの形へ落とし込む段階に入ります。IAとワイヤーフレームをつなぐこの工程が、使いやすいデザインを実務として形にする部分です。
要件整理 → IA → ワイヤーの流れ
プロジェクトでは、次の順番で進めると、無理なく全体が整います。
● 要件整理(目的・ターゲットの確認)
まず「誰のためのサイトなのか」「何を達成するか」を明確にします。ここが曖昧だと、情報設計もワイヤーも判断基準を失います。
● IA(情報の洗い出し・分類・階層化)
目的が決まったら、必要な情報を整理します。ユーザーが知りたい順・動きたい順に合わせて構造を組み立てます。
● ユーザーフロー(動線の確認)
構造が固まったら、実際にユーザーがどう動くかを可視化します。つまずきそうなポイントを洗い出す工程です。
● ワイヤーフレーム(UIの形に落とし込む)
最後に、UIとしてどう配置するかを設計します。文字量、画像、導線、フォームなど、ユーザー操作に直結する部分を具体化します。
この順番を踏むことで、UIは流れの結果として自然に生まれます。逆に、最初からワイヤーに入ろうとすると、判断に迷いやすく、戻り作業が増えます。
ワイヤーフレーム作成のポイント
ワイヤーフレームを作るときは、「読む順番」と「操作のしやすさ」の両方を意識します。見た目よりも、まずはユーザーの行動が優先です。
特に意識したいポイントは次の3つです。
①「ページを読む順番」を線で追えるか
視線の流れが自然かどうか。上から読むのか、横に流すのか。流れが散らばるとユーザーは迷いやすくなります。
②「操作に必要な要素」が揃っているか
ボタン、リンク、入力欄など、操作に必要な要素が過不足なく配置されているかを確認します。
③「情報の重み」が整理されているか
重要な情報は大きく、補足情報は控えめに。情報の優先度が、画面の中で視覚的に伝わるようにします。
ワイヤーは美しさではなく、あくまで"情報の整理とUIの合理性"が目的。読み手が流れを理解できるかどうかを軸に判断します。
レビュー・改善の進め方
ワイヤーフレームが一通りできたら、必ず「第三者レビュー」を入れます。作り手だけでは見落としてしまうつまずきポイントが、他の目線だと自然に見えてくるからです。
改善するときは、以下のチェックが役立ちます。
● 目的を果たす導線になっているか
最短で目的にたどり着ける配置かどうかを見直す。
● 情報が多すぎたり、少なすぎたりしないか
ちょうどよい情報量になっているかを確認。余分な情報はフローを妨げます。
● 専門知識がない人でも理解できるか
第三者の視点で「意味が通るか?」「行動が想像できるか?」を確認。
レビューと改善を繰り返すことで、情報設計とUIの整合性が高まり、ユーザーが迷わない画面が仕上がります。ワイヤーフレームは、作って終わりではなく磨くことで強くなる工程です。
はじめての情報設計とワイヤーフレーム・まとめ
- 情報設計は迷わない導線づくりの土台
- 情報は最初にすべて洗い出す
- 関連性でグループ分けして整理する
- ユーザーが知りたい順に優先付けする
- 階層は深くしすぎず2〜3階層で整理
- ユーザーフローで動線の流れを確認する
- 迷いやすいポイントは事前に洗い出す
- ワイヤーは構造を形にする設計図
- ローフィで大枠を決めハイフィで整える
- 基本パーツを押さえて配置を判断する
- ワイヤーは読みやすさと操作性が軸
- 第三者レビューで改善点を見つける
