2026年6月27日より、三重県明和町にある斎宮歴史博物館にて夏季企画展「王朝文学と斎王」が開催されます。平安時代に花開いた数々の文学作品のなかで、伊勢神宮に仕えた「斎王」はどのように描かれてきたのでしょうか。本記事では、展示の概要や注目の展示資料について解説するとともに、展示の世界観をより深く味わうための前提知識を紹介します。
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「王朝文学と斎王」の概要と見どころ
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文学作品に描かれた斎王の姿に迫る
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絵巻や屏風で視覚的に物語をたどる
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開催情報
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関連イベント
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展示の世界へ入り込むための基礎知識
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そもそも斎王とはどのような存在か
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斎王と斎宮の違いについて
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平安貴族が育んだ王朝文学の世界

「王朝文学と斎王」の概要と見どころ
文学作品に描かれた斎王の姿に迫る
斎宮歴史博物館で2026年6月27日より開催される夏季企画展「王朝文学と斎王」は、日本文学を代表する様々な作品のなかに登場する斎王の姿に焦点を当てた展示です。
平安時代を中心に成立した王朝文学作品には、伊勢斎王が登場するものが複数存在します。著名な『伊勢物語』や『源氏物語』をはじめとして、『大和物語』や『狭衣物語』といった物語文学のなかにも斎王の姿を見出すことができます。また、歴史的出来事や人物の生涯を記した『大鏡』や『栄花物語』といった歴史物語においても、実在した斎王たちの姿やその生き様が具体的に描かれています。
さらに文学作品に描かれるだけでなく、斎王自身も自ら和歌を詠み、和歌を通じて人々と交流を持っていたことが分かっています。彼女たちは物語の登場人物にとどまらず、当時の文化や文学の担い手としての役割も果たしていました。
本展覧会では、王朝文学作品の中で斎宮や斎王がどのように取り上げられ表現されたのかを探ります。文章や絵画、工芸などさまざまな視点からアプローチし、王朝文学における斎王や斎宮の姿を紹介する内容となっています。
絵巻や屏風で視覚的に物語をたどる
今回の展覧会では全44件の資料が展示される予定です。主な展示品として、斎宮歴史博物館が所蔵する江戸時代の『伊勢物語絵巻』が挙げられます。これは本文と63場面の挿絵で構成されており、狩の使として斎宮に滞在中の男のもとへ、夜に斎王が忍んでやってくる場面が描かれています。また、名古屋市博物館が所蔵する『伊勢物語手鑑』でも同じ「狩の使」の場面の絵色紙が展示されます。
『源氏物語』に関連する資料も多数紹介されます。京都国立博物館所蔵の『源氏物語 葵絵巻 巻三』は、近年「盛安本源氏物語絵巻」として知られる資料の葵の巻です。髪に染みついた芥子(けし)の匂いから、自らが生霊となって光源氏の正妻である葵上にとりついたことを悟った六条御息所が、匂いを取り去ろうと髪を洗う場面が描かれています。
さらに堺市博物館所蔵の『源氏物語図色紙』では、娘の斎王とともに野宮に滞在中の六条御息所を光源氏が訪れ、御簾の中に榊(さかき)の枝を差し入れる場面を鑑賞できます。
斎宮歴史博物館所蔵の江戸時代の『春秋草花図下絵三十六歌仙図色紙貼交屏風』からは、几帳の背後で繧繝縁(うんげんべり)の畳の上に座る斎宮女御を描いた色紙部分が紹介されます。繧繝縁は最も格式の高い畳の縁(へり)です。多彩な視覚資料を通じて物語の世界をたどる構成になっています。
開催情報
| 展示名 | 夏季企画展「王朝文学と斎王」 |
|---|---|
| 主催 | 斎宮歴史博物館 |
| 会期 | 2026年6月27日から8月23日まで(前期:6月27日から7月26日、後期:7月28日から8月23日) |
| 開館時間 | 9時30分から17時(入館は16時30分まで) |
| 観覧料 | 一般500円、大学生400円、高校生以下無料 |
| 休館日 | 月曜日(祝日の場合は翌日)。6月29日、7月6日、7月13日、7月21日、7月27日、8月3日、8月10日、8月17日 |
関連イベント
| イベント名 | 記念講演会「貴公子のたどり着く場所―上代から平安に至る斎宮の文学史―」 |
|---|---|
| 日時 | 2026年7月11日13時30分から15時30分まで |
| 講師 | 本橋裕美さん(愛知県立大学日本文化学部准教授) |
| 場所 | 斎宮歴史博物館講堂 |
| 定員 | 120人(定員を超えた場合は抽選) |
| 備考 | 参加無料。要事前申込(募集期間:6月11日から7月1日まで必着) |
| イベント名 | 学芸員による展示解説会 |
|---|---|
| 日時 | 2026年7月4日、8月8日。いずれも13時30分から14時30分まで |
| 講師 | 担当学芸員 |
| 場所 | 斎宮歴史博物館特別展示室 |
| 定員 | 自由参加(事前申込不要) |
| 備考 | 当日の企画展観覧券または共通観覧券が必要 |
展示の世界へ入り込むための基礎知識
企画展へ足を運ぶ前に知っておくと、展示をより深く楽しめる前提知識をいくつか紹介します。
そもそも斎王とはどのような存在か
斎王とは、天皇に代わって伊勢神宮の天照大神に仕えるために選ばれた未婚の皇族女性のことです。未婚の内親王または女王の中から選出されました。飛鳥時代に制度として確立し、南北朝時代に途絶えるまで、約660年もの長きにわたって60人余りの斎王が伊勢へと遣わされた歴史があります。
新しい天皇が即位するごとに占いで選ばれ、宮中の初斎院(しょさいいん)や都の郊外の野宮(ののみや)で身を清めた後、伊勢へと出発しました。その任期は天皇の崩御や譲位、あるいは親族の不幸などが発生するまで続き、基本的には都へ帰ることは許されない厳しい立場でもありました。神に仕える皇族女性として、王朝文学のなかでも特別な存在として描かれています。
斎王と斎宮の違いについて
「斎王」と「斎宮」という言葉は混同されがちですが、それぞれ指し示す意味が異なります。「斎王」は天皇の代理として伊勢神宮に仕える女性その人、つまり人物を指す言葉です。
一方で「斎宮」は、斎王が伊勢で生活し、儀式を行うための宮殿や施設、あるいはその場所を指します。そこには斎王を支えるための役所である斎宮寮が置かれ、500人以上の官人が働いていたとされています。
時代が下ると「斎宮」という言葉自体が斎王を指す呼称として使われることもありましたが、本来は人物と場所という明確な違いが存在します。展示資料を見る際にも、この違いを理解しておくと当時の情景をより正確に想像できます。
平安貴族が育んだ王朝文学の世界
王朝文学とは、主に平安時代に京都の宮廷社会を中心に生み出された文学作品の総称です。貴族たちの恋愛模様や政治の動向、日常の出来事などが、和歌や物語、日記、随筆といった様々な形式で綴られました。代表的なものとして紫式部の『源氏物語』や清少納言の『枕草子』が挙げられます。
当時の貴族にとって、和歌を詠むことや物語への理解は、宮廷社会での教養を示す重要な要素でした。斎王もまた、都から遠く離れた伊勢の地にあっても、和歌を通じて都の文化と深く結びつき、王朝文学と関わっていたことがうかがえます。

