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2025.06.25

【堺市博物館】堺のたからもん-金で魅せる・黒を愛でる-|新発見された仁徳天皇陵古墳 副葬品も展示

堺市博物館が開館から40年以上にわたって収集してきた貴重な作品の中から、金色と黒色をテーマにした企画展が開催されます。注目は、明治時代以来実物が確認されていなかった仁徳天皇陵古墳(大山古墳)の副葬品が新たに発見され、展示されることです。古代から近世まで、堺の地で愛され続けてきた「金」と「黒」の美しさを通じて、この地域の豊かな文化の歴史をたどることができる貴重な機会となっています。

目次
  • 古物収集家・柏木貨一郎と仁徳天皇陵古墳調査
  • 金銅装刀子など副葬品発見が物語ること
  • 安土桃山時代の輸出漆器
  • 夏休みの学びと体験プログラム
  • 開催情報

【堺市博物館】堺のたからもん-金で魅せる・黒を愛でる-|新発見された仁徳天皇陵古墳 副葬品も展示【歴史ニュース】金と黒、時を超える輝きをイメージした画像 作成:junk-word.com
黒の静寂、金のまばゆさをイメージした画像 作成:junk-word.com

仁徳天皇陵古墳の行方不明だった副葬品が再び姿を現す

古物収集家・柏木貨一郎と仁徳天皇陵古墳調査

今回の発見の鍵となった柏木貨一郎(かしわぎ かいちろう)は、江戸時代末期から明治時代にかけて活躍した人物で、明治5年の仁徳天皇陵古墳調査に絵師として参加しました。神田和泉橋の糸屋・辻家に生まれたとされますが、詳細な経歴については諸説あります。

柏木は、明治5年に実施された「壬申検査(じんしんけんさ)」と呼ばれる全国的な文化財調査に参加しました。この調査では、文部省から派遣された町田久成を総責任者として、写真師・横山松三郎らとともに宝物の記録をしたのです。

柏木の専門性は建築と古美術の両分野にわたり、後に三井集会所や渋沢栄一邸などの和風建築の設計も手がけたとされています。そして仁徳天皇陵古墳の調査では、現場に立ち会って石室内の様子や副葬品の絵図を詳細に記録しました。

金銅装刀子など副葬品発見が物語ること

國學院大學博物館が2024年に購入した柏木貨一郎の遺品から、仁徳天皇陵古墳の副葬品とされる刀子(とうす)と甲冑片が発見されました。刀子と甲冑片は和紙に包まれ、「明治五年九月」「仁徳帝御陵前之石郭」「刀鐺」「仁徳帝御陵」「甲冑金具」などと墨書され、柏木の印が押されていました。これらの特徴が真正性を示す重要な手がかりとされています。

発見された金銅装刀子(こんどうそうとうす)は長さ約10.5センチの1点が二つに折れており、科学分析の結果、刀身が鉄製でヒノキの鞘に金銅板で装飾が施されていることが判明しました。甲冑片は数センチのものが2点で、鉄地に金銅板を貼り合わせた構造となっており、いずれも当初は金色に輝いていたと考えられます。

これらの発見により、5世紀の古墳時代における技術水準の高さと、国際的な文化交流の実態を物語る貴重な資料として、今後研究が進むことが期待されています。

堺が誇る漆工芸の技と美

安土桃山時代の輸出漆器

展示される「草花蒔絵螺鈿洋櫃」は、安土桃山時代から江戸時代にかけて海外輸出の花形商品だった洋櫃の代表的な作品です。洋櫃とは、長方形の箱に蒲鉾形の蓋が付き、蝶番で留めた器物のことで、当時の日本の漆工芸技術の高さを示す重要な文化財です。

この作品の特徴は、四周を南蛮唐草で囲み、螺鈿という貝殻の内側の虹色に光る部分を使った装飾技法で画面を区切り、それぞれに草花を描いている点です。螺鈿は、貝殻を薄く削り、漆地に貼り付ける技法で、光の角度によって美しく輝く効果を生み出します。

安土桃山時代には南蛮貿易によって漆器の輸出が盛んになり、堺も商業都市の一つとして国際貿易に関わっていました。蒔絵や螺鈿の技術はヨーロッパでも高く評価され、「japan」が漆器を意味する言葉として使われるようになりました。

ここがポイント!

螺鈿技法は、中国から伝わり日本で独自に発展した装飾技術で、現在でも高級漆器に使用されています。貝の種類や厚さ、カットの仕方によって異なる輝きを生み出すことができ、職人の高度な技術と美意識が結集された芸術品といえます。

夏休みの学びと体験プログラム

展示期間中には、仁徳天皇陵古墳に関する講演会のほか、夏休み期間に3つのワークショップと学芸員による展示解説ツアーが開催されます。子どもたちの夏休みの自由研究にも活用できるプログラムです。

ワークショップでは、本物の金箔を使った古墳柄インテリアプレート作り、金継ぎでアクセサリー作り、古代の文字を使ったウチワ作りが体験できます。いずれも小学生以上が対象で、事前申込が必要です。

また、8月と9月に開催される「企画展を楽しむツアー」では、担当学芸員が展示内容を解説します。事前申込は不要で、観覧料のみで参加できます。

開催情報

展示名 堺のたからもん-金で魅せる・黒を愛でる-
主催 堺市博物館
会期 令和7年7月19日(土曜)~9月7日(日曜)
開館時間 午前9時30分~午後5時15分(入館は午後4時30分まで)
入館料 一般 200円(160円)/高校・大学生 100円(70円)/小・中学生 50円(30円)
※( )内は20人以上の団体料金
休館日 月曜日(祝・休日は開館)

2025年注目の古代・遺跡関連展示

堺の仁徳天皇陵古墳の副葬品発見と合わせて注目したい、古代や歴史に関連する展示をご紹介します。これらの展示と堺市博物館の企画展を組み合わせることで、古代から現代まで続く文化の流れをより深く感じることができるでしょう。

開催中・開催予定の古代関連展示

施設名 展示名 会期 概要
豊田市博物館 ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト 2025年6月28日~9月7日 ニューヨーク・ブルックリン博物館が誇る古代エジプトコレクションから約150点を展示。最新技術を使ったピラミッド研究成果や「ピラミッド・テキスト」の再現音声も紹介。
東京国立博物館 イマーシブシアター 新ジャポニズム ~縄文から浮世絵 そしてアニメへ~ 2025年3月25日~8月3日 縄文土器、はにわ、絵巻、鎧兜、浮世絵からアニメまで、1万年以上受け継がれてきた日本の美意識をNHKの高精細映像技術で紹介するイマーシブシアター展示。
山梨県立考古博物館 考古学講座・古代技術体験 7月~継続開催 縄文時代や古墳時代の発掘調査成果を紹介する講座や、古代の技術を学ぶ体験プログラムを開催。山梨の七夕人形作りなど地域の伝統文化も体験できる。

堺市博物館企画展と仁徳天皇陵古墳の副葬品のまとめ

  • 堺市博物館が金色と黒色をテーマにした企画展を開催
  • 仁徳天皇陵古墳の副葬品が明治時代以来初めて発見
  • 柏木貨一郎が明治5年の壬申検査で絵図を作成
  • 金銅装刀子は長さ10.5センチで金銅板装飾
  • 甲冑片も鉄地に金銅板を貼り合わせた構造
  • 5世紀古墳時代の高い技術水準を示す貴重な資料
  • 草花蒔絵螺鈿洋櫃は安土桃山時代の輸出漆器
  • 螺鈿技法は貝殻を使った日本独自の装飾技術
  • 堺も南蛮貿易で国際的な商業都市として発展
  • 夏休み期間中に3つのワークショップを開催
  • 金箔体験や金継ぎなど伝統技術が学べる
  • 学芸員による企画展ツアー