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2025.04.24

わかやま歴史館特別展:徳川吉宗の生涯と功績 - 伝説から実像へ

和歌山市のわかやま歴史館で、徳川吉宗の実像に迫る企画展「吉宗上様になる 紀州のお殿様の履歴書」が2025年4月22日から6月2日まで開催されています。この展示では、古文書や日記、刀剣など25点の資料を通じて、紀州藩主から江戸幕府8代将軍となった徳川吉宗の実像に迫ることができます。近年見つかった「紀州藩家老三浦家文書」など、新たな発見を知ることができる貴重な機会となっています。

目次
  • 紀州藩主から江戸幕府将軍へ
  • 財政改革の基礎を築いた紀州藩主時代
  • 「暴れん坊将軍」と実像の狭間
  • 将軍としての思いが込められた奉納刀
  • 紀州藩家老三浦家文書」が明かす真実
  • 和歌山城の総合ガイダンス施設
  • 歴史展示室の見どころ
  • 和歌山城公園の魅力
  • 歴史散策モデルコース
  • 2025年徳川家に関する企画展示

和歌山城 わかやま歴史館 企画展示「吉宗、上様になる!~紀州のお殿さまの履歴書~」【歴史ニュース】
和歌山城

時代を超えて語られる徳川吉宗の生涯

紀州藩主から江戸幕府将軍へ

徳川吉宗は1684年(貞享元年)10月21日、紀州藩主徳川光貞の四男として和歌山城下の吹上邸で誕生しました。母は巨勢利清の娘・紋子で、和歌山城の大奥の湯殿番であった紋子は、湯殿において光貞の手がついたという伝説があります。

当時、四男であった吉宗が将来藩主になる可能性は低いと考えられていましたが、宝永2年(1705)に長兄(紀州藩3代藩主)、次兄(4代藩主)が相次いで没したため、22歳にして第5代紀州和歌山藩主となります。

財政改革の基礎を築いた紀州藩主時代

紀州藩主として徳川吉宗は、後の享保の改革につながる財政再建の手腕を発揮しました。紀州藩主として財政再建の手腕をふるっている最中、徳川吉宗のもとに将軍職を継ぐ話がもたらされます。

1716年(享保元年)に7代将軍「徳川家継」が、わずか8歳の若さで病没したためです。こうして吉宗は江戸幕府の第8代将軍となり、幕府中興の祖とも呼ばれる名君として歴史に名を残すこととなりました。

「暴れん坊将軍」と実像の狭間

多くの人がテレビドラマの影響で「暴れん坊将軍」というイメージを持つ徳川吉宗ですが、この展示では実際の一次資料を通じて、その実像に迫ることができます。和歌山市和歌山城整備企画課の学芸員は「テレビの『暴れん坊将軍』などのイメージが強い吉宗だが、古文書や当時の日記などの1次資料から本来の姿をひもといているので是非、見にきてほしい」と話しています。

吉宗には、こんな逸話が残されています。あるとき鷹を射止めた際、供の者が小さな声でほめたところ、吉宗は「そんな褒めようがあるか。もっと景気よく褒めるものだ」と豪快に笑ったといいます。また、狩りの最中に家来の持っていた鉄砲が吉宗の顔に当たってしまい、家来が真っ青になって土下座して謝ると、吉宗は周囲を見回して「誰も見ていないから構わん。お前も黙っておれ」とこともなげに言ったという話も伝わっています。

こうした逸話からは、ドラマ『暴れん坊将軍』で描かれる姿とは一味違う、人間味あふれる吉宗の一面を感じ取ることができます。

注目の展示資料

将軍としての思いが込められた奉納刀

企画展では、将軍時代の享保6年、和歌山市の伊太祁曽神社に奉納された「太刀」も展示されています。この太刀は、室町時代初期に作られた名刀で、ふるさとへの吉宗の思いをうかがうことができます。江戸幕府の頂点に立ってもなお、故郷和歌山への思いを持ち続けた吉宗の人柄を感じさせる貴重な資料です。

「紀州藩家老三浦家文書」が明かす真実

展示の目玉の一つが、近年発見された「紀州藩家老三浦家文書」です。明治時代に著された「南紀徳川史」では吉宗は捨て子にされ藩士に養育されたというエピソードが記されていましたが、この文書では幼名「源六君」が体調不良の際に藩のお抱え医師が診察したと記録されており、家臣によって養育されたとは考えにくいことが明らかになっています。これは、新たな史料の発見により、従来語り継がれていたエピソードの見直しが進んだ例と言えるでしょう。

わかやま歴史館の魅力

和歌山城の総合ガイダンス施設

わかやま歴史館は和歌山城の豊富な史資料を展示しているほか、江戸時代の和歌山城をVRで再現した「よみがえる和歌山城」の上映、市内名所・旧跡への観光案内、和歌山のお土産物の販売等をしている総合ガイダンス施設です。

南海和歌山市駅から徒歩で約10分、和歌山インターチンジから車で約15分の場所にある、2015年にオープンした施設で、和歌山城公園内に位置しています。

歴史展示室の見どころ

館内2階の歴史展示室では、VRで再現された和歌山城の映像や、紀州徳川家ゆかりの貴重な品々や資料が展示されています。また、和歌山出身の著名人の展示があり、松下幸之助や南方熊楠など和歌山出身の偉人についても知ることができます。今回の徳川吉宗に関する企画展と合わせて見学することで、和歌山の歴史と文化への理解がより深まるでしょう。

アクセスと周辺の見どころ

和歌山城公園の魅力

わかやま歴史館がある和歌山城公園は、徳川吉宗ゆかりの地としても知られています。

和歌山城は、天正13年(1585)に紀州を平定した豊臣秀吉が弟の秀長に築城させたのが始まりで、元和5年(1619)には徳川家康の第10男・頼宣が入城し、紀州55万5千石の城となり、以来、水戸・尾張と並び、徳川御三家のひとつとして長い歴史を刻んできました。

徳川吉宗の展示を見学した後は、城内を散策し、吉宗が生きた時代の和歌山の雰囲気を感じてみるのも良いでしょう。

歴史散策モデルコース

和歌山城周辺には、徳川吉宗や紀州徳川家に関連する史跡が多く残されています。和歌山城は随所に壮大な石垣が残っており、時代によって積み方が違います。

豊臣・桑山期に多く造られた「野面積み」や、浅野・徳川期に造られた「打込接ぎ」と言われる石垣など、時代ごとの特徴を見比べることができます。

また、ボランティアガイドによる案内も実施されており、土日祝日と一部の平日の10時と13時に実施中とのことですので、歴史に詳しいガイドと共に巡るのもお勧めです。

徳川家に関する他の展示・イベント

2025年徳川家に関する企画展示

2025年には、日本の複数の博物館や歴史館で徳川家に関連する企画展示が予定されています。特に、開館90周年を迎える名古屋市の徳川美術館では、尾張徳川家ゆかりの国宝「初音の調度」や「源氏物語絵巻」の全点公開を含む大規模な記念展示が年間を通して開催されます。

茨城県水戸市の茨城県立歴史館や徳川ミュージアムでは、それぞれ一橋徳川家、水戸徳川家に関する展示が予定されています。静岡市の静岡市歴史博物館では徳川慶喜や家達に焦点を当てた展示、和歌山県の和歌山県立博物館では紀伊徳川家に関する特別展が開催される予定です。これらの展示は、徳川家の各系統や関連人物、ゆかりの品々について深く知る良い機会となるでしょう。

施設名 展示名 会期 概要
徳川美術館 特別展「国宝 初音の調度 2025年4月12日~6月8日 国宝「初音の調度」全点を10年ぶりに公開。
徳川美術館 夏季特別展「時をかける名刀 2025年6月14日~9月7日 尾張徳川家伝来の名刀を展示。
徳川美術館 企画展「尾張家臣団 2025年11月15日~12月14日 尾張徳川家を支えた家臣たちに焦点を当てる。
静岡市歴史博物館 企画展「明治維新と静岡 徳川慶喜、家達と旧幕臣たち 2025年4月26日~6月8日 徳川慶喜と家達、旧幕臣の生活を紹介。
茨城県立歴史館 一橋徳川家記念室展示「徳川治済 2025年4月22日~6月15日 一橋徳川家の資料を展示。
茨城県立歴史館 一橋徳川家資料にみる文様 2025年11月1日~12月21日 一橋徳川家の文様に関する展示。
和歌山県立博物館 特別展「紀伊徳川家の威風 2025年10月11日~11月24日 紀伊徳川家の歴史を紹介。
徳川ミュージアム 水戸徳川家名宝展-學び- 2025年1月4日~12月7日 水戸徳川家に関連する名宝を展示。

わかやま歴史館 徳川吉宗の実像に迫る企画展のまとめ

わかやま歴史館で開催されているこの企画展「吉宗上様になる 紀州のお殿様の履歴書」は、2025年4月22日から6月2日まで開催されています。

徳川吉宗の実像に迫るこの貴重な機会をぜひお見逃しなく。テレビドラマなどでよく知られている「暴れん坊将軍」のイメージとは異なる、一次資料から見えてくる徳川吉宗の実像をご覧いただけます。

  • 展示名:「わかやま歴史館 春の企画展示 吉宗上様になる 紀州のお殿様の履歴書」
  • 会期:2025年4月22日(火)~6月2日(月)
  • 会場:わかやま歴史館(和歌山市和歌山城公園内)
  • 内容:徳川吉宗の実像に迫る古文書や日記、刀剣など25点の資料を展示
  • 入館料:歴史展示室入場券(単館入場券)/大人:100円、小人(小・中学生):無料
  • 和歌山城天守閣との共通入場券のみ割引あり
  • 和歌山市在住の65歳以上の方・障害者手帳を所持されている方は両館とも無料
  • 主催:和歌山市
  • 徳川吉宗の実像に迫る企画展
  • 1684年、紀州藩主の四男として誕生
  • 22歳で紀州藩主に就任
  • 財政再建の手腕を発揮
  • 8歳で亡くなった家継の後を継ぎ将軍に
  • 「暴れん坊将軍」と実像の違い
  • 豪快でユーモアのある人柄
  • 伊太祁曽神社に奉納された名刀
  • 三浦家文書が明かす新事実
  • わかやま歴史館のVR展示
  • 和歌山城公園の歴史的価値
  • ボランティアガイドの活用法
  • 2025年に全国で開催の徳川展