令和7年(2025年)は昭和元年から数えてちょうど100年の節目の年です。品川歴史館では、リニューアル1周年を記念して「昭和100年しながわめぐり」と題した特別展を開催します。この展示では、大正12年(1923年)の関東大震災後の復興の様子から平成初期までの品川の歩みを、写真と地図を通して紹介します。昭和40~50年代の西小山通り商店街や1966年の南品川四郵便局の写真など、地域の記憶を伝える資料を通じて、品川区の変遷を体感できる機会です。近年、全国的に「昭和レトロ」への関心が高まる中、地域に根ざした視点から昭和時代を振り返る貴重な展示になるでしょう。
- 品川歴史館リニューアル記念の特別企画展とは
- 令和7年は昭和100年の記念すべき年
- 写真と地図で振り返る品川区の歩み
- 昭和時代を知る:100年の時を経た日本社会の激動期
- 昭和時代の始まりと終わり:64年間の概要
- 戦前・戦中・戦後:時代区分で理解する昭和
- 暮らしの変化:「三種の神器」からバブルまで
- 大正時代に発生した関東大震災からの復興:現代東京の骨格が作られた時代
- 関東大震災後の復興期の資料を展示
- 大正12年の大震災:関東を襲った未曾有の災害
- 帝都復興計画:後藤新平の都市づくりビジョン
- 品川区の変遷:工業地帯から住宅・オフィス街へ
- 東海道の宿場町から工業地域へ:品川の地理的特性
- 高度経済成長期の品川:工場と商店街の賑わい
- 平成以降の再開発:新しい街の姿
- 昭和レトロブームの魅力:なぜ今、昭和時代に注目が集まるのか
- 懐かしさと新鮮さが共存する昭和文化
- 失われつつある地域のつながりへの再評価
- 若い世代にとっての新鮮な異文化体験
- タイムトラベルを楽しむ:展示の楽しみ方
- 家族三世代で楽しむ:会話のきっかけづくり
- 写真と地図の読み解き方
- 「昭和100年しながわめぐり」展 開催情報
品川歴史館リニューアル記念の特別企画展とは
令和7年は昭和100年の記念すべき年
令和7年(2025年)は、昭和元年(1926年)から数えてちょうど100年という節目の年になります。昭和時代は日本が大きく変化した時代であり、特に戦後の高度経済成長期には日本の産業や生活文化が大きく発展しました。品川区もその変化の波に乗って、工業地帯として発展し、現在の姿へと変わってきました。
品川歴史館では、このような歴史的節目に合わせて「昭和100年しながわめぐり」という特別展を企画しました。この展示はリニューアル1周年を記念した企画展でもあり、改装された新しい施設で品川区の歴史を分かりやすく紹介することを目指しています。
写真と地図で振り返る品川区の歩み
この特別展の最大の特徴は、品川区と品川歴史館が所蔵する写真と地図を中心に構成されていることです。写真は過去の風景や人々の暮らしをそのまま切り取った貴重な記録であり、地図は街の構造や変化を俯瞰的に示してくれます。
展示では大正12年(1923年)の関東大震災後の復興の様子から始まり、戦中・戦後の品川区、高度経済成長期の活気ある商店街、そして平成初期までの変遷が時系列で紹介されています。これらの資料を通じて、現在の品川区がどのように形成されてきたのかを視覚的に理解することができるでしょう。
例えば、昭和40~50年代の西小山通り商店街の写真からは、チェーン店が少なく個人商店が軒を連ねていた時代の賑わいや、人々のファッション、店の看板デザインなど、当時の空気感を感じることができます。また、1966年(昭和41年)の南品川四郵便局の写真は、地域の暮らしを支えた公共施設の姿を今に伝えています。
昭和時代を知る:100年の時を経た日本社会の激動期
昭和時代の始まりと終わり:64年間の概要
昭和時代は1926年(大正15年)12月25日から1989年(平成元年)1月7日までの約64年間続きました。この時代は昭和天皇(裕仁さん)が在位していた期間を指し、日本社会に大きな変化をもたらした激動の時代でした。
昭和時代の始まりは世界恐慌の影響を受けた不況の時期と重なり、その後は戦争へと向かっていきました。終わりには「バブル経済」と呼ばれる好景気を迎え、日本が世界第二位の経済大国となった時期でもありました。わずか64年の間に、日本は戦争と敗戦を経験し、そこから立ち直って高度経済成長を遂げるという劇的な変化を遂げたのです。
戦前・戦中・戦後:時代区分で理解する昭和
昭和時代は大きく「戦前」「戦中」「戦後」の3つに分けて理解するとわかりやすいでしょう。戦前の昭和(1926年~1941年頃)は、世界恐慌の影響を受けた経済混乱や軍国主義の台頭が進んだ時期です。品川区も東京の一部として工業化が進み、工場地帯として発展していきました。
戦中期(1941年~1945年)は太平洋戦争の時期であり、品川区も空襲による被害を受けました。特に1945年3月10日の東京大空襲では品川区も被災し、多くの命や住居、工場が失われました。
戦後(1945年~1989年)になると、日本は驚異的な復興と経済成長を遂げます。特に1950年代後半から1970年代初めまでの「高度経済成長期」には、東京オリンピック(1964年)が開催され、品川区でも都市化が進みました。工場地帯としての性格を維持しながらも、徐々に住宅地域としての側面も強まっていったのです。
暮らしの変化:「三種の神器」からバブルまで
昭和時代の暮らしは、戦後の高度経済成長とともに大きく変化しました。1950年代後半には、テレビ・冷蔵庫・洗濯機といった「三種の神器」と呼ばれる家電製品が各家庭の憧れとなり、1960年代には多くの家庭に普及していきました。
1970年代に入ると、カラーテレビ・クーラー・自動車という「新三種の神器」が登場し、生活の快適さが一層追求されるようになります。品川区でも郊外型の大型スーパーが出店し始め、従来の商店街との競合が始まりました。
そして1980年代後半には「バブル経済」と呼ばれる好景気を迎え、消費文化が花開いた時代となりました。品川区内でも天王洲や大崎などで再開発が進み、古い工場跡地にオフィスビルやマンションが建設されるなど、街の姿が大きく変わり始めたのもこの時期からです。
大正時代に発生した関東大震災からの復興:現代東京の骨格が作られた時代
関東大震災後の復興期の資料を展示
品川歴史館の「昭和100年しながわめぐり」展では、関東大震災後の復興期の写真や地図も展示される予定です。これらの資料を通じて、現在の品川区の都市構造がどのように形成されてきたのかを理解することができるでしょう。震災復興が品川区に残した都市計画の遺産は、今も私たちの生活を支える重要な社会基盤となっています。
大正12年の大震災:関東を襲った未曾有の災害
関東大震災は、1923年(大正12年)9月1日に発生した、日本史上最大級の都市災害です。マグニチュード7.9の巨大地震は、東京・横浜を中心とする関東地方に壊滅的な被害をもたらしました。特に、地震後に発生した大規模な火災によって、東京の市街地の多くが焼失しました。
この未曾有の災害からの復興を指揮したのが、当時の内務大臣だった後藤新平です。震災の翌日に山本権兵衛内閣が発足し、復興事業を担う機関として「帝都復興院」が設立されました。後藤新平が総裁を務めたこの機関は、単なる復旧ではなく、近代的な都市づくりを目指した復興計画を推進しました。
帝都復興計画:後藤新平の都市づくりビジョン
帝都復興院による復興計画は、単に被災前の状態に戻すのではなく、より良い都市を作る「創造的復興」を目指していました。具体的には、狭い道路の拡幅や公園の整備、近代的な上下水道の敷設など、現代の東京の都市基盤の多くはこの時期に形成されたものです。
復興計画に基づき、焼失区域を中心に街路、橋梁、河川、運河、公園及び土地区画整理等の事業が行われ、今日の東京につながる社会資本が整備されました。これは言わば「東京という都市の骨格を作り直した大手術」のようなものでした。震災以前の江戸時代からの自然発生的な都市構造から、計画的に設計された近代都市へと東京は生まれ変わったのです。
品川区の変遷:工業地帯から住宅・オフィス街へ
東海道の宿場町から工業地域へ:品川の地理的特性
品川区は東京23区の南部に位置し、江戸時代には東海道の最初の宿場町「品川宿」があった歴史ある地域です。明治以降は東京の南の玄関口として、また京浜工業地帯の一角として発展してきました。
品川が工業地域として発展した背景には、東京湾に面した地理的条件があります。海運を利用した物資の運搬が容易だったこと、また比較的広い土地が確保できたことから、明治期以降、多くの工場が立地するようになりました。昭和初期には、大崎や大井、八潮地区などに多くの工場が集積し、ものづくりの拠点として栄えました。
高度経済成長期の品川:工場と商店街の賑わい
高度経済成長期(1950年代後半~1970年代初め)には、品川区内の工場も最盛期を迎え、多くの労働者が集まりました。工場で働く人々の生活を支えるため、区内各所に商店街が形成され、活気ある街となりました。
今回の展示に登場する「西小山通り商店街」もその一つで、昭和40~50年代には多くの商店が軒を連ね、地域住民の買い物の場として賑わいました。また、南品川四郵便局のような公共施設も地域の人々の暮らしを支える重要な役割を果たしていました。
この時期の品川区は、工場と住宅が混在する「職住近接」の地域として発展しました。工場で働く人々が近くに住み、地元の商店街で買い物をするという生活スタイルが一般的だったのです。
平成以降の再開発:新しい街の姿
1980年代以降、特にバブル期から平成に入ると、品川区の産業構造も大きく変化していきました。多くの工場が郊外や海外に移転し、その跡地にオフィスビルやマンションが建設されるようになりました。
特に大崎駅周辺や天王洲アイル、品川駅東口エリアなどでは大規模な再開発が進み、高層ビル群が立ち並ぶ新しい街の姿に生まれ変わりました。かつての工業地域は、IT企業やグローバル企業のオフィスが集まるビジネス街へと変貌したのです。
このような品川区の変遷は、日本の産業構造の変化を映し出す鏡のようなものです。今回の展示では、写真と地図を通じて、こうした変化の過程を実感することができるでしょう。
昭和レトロブームの魅力:なぜ今、昭和時代に注目が集まるのか
懐かしさと新鮮さが共存する昭和文化
近年、昭和時代の文化や生活様式に注目が集まる「昭和レトロブーム」が広がっています。全国各地で昭和時代の街並みを再現したり、当時の生活用品や文化を紹介する展示会が人気を集めています。「懐かしの時代へ!昭和レトロ展」のような企画展は、床屋、駄菓子屋、喫茶店など昭和時代の商店街を再現し、来場者は実際にその空間に入り込んでタイムスリップ体験を楽しむことができます。
このブームの背景には、高度経済成長期からバブル期にかけての活気ある日本社会への郷愁や、物質的には豊かでなくとも人々の絆や地域のつながりが強かった時代への憧れがあります。特に、中高年層にとっては懐かしい思い出を呼び起こす機会となっています。
一方、若い世代にとっては、親や祖父母の時代を知る新鮮な体験となっています。大量生産・大量消費の現代では失われつつある「手作り感」や「温かみ」、「個性」あふれるデザインや空間は、デジタルネイティブ世代にも新鮮な魅力をもたらしています。
失われつつある地域のつながりへの再評価
昭和レトロブームのもう一つの背景には、地域コミュニティへの関心の高まりがあります。昭和時代、特に高度経済成長期までの商店街は、単なる買い物の場ではなく、地域の人々が交流する社交の場でもありました。店主と客の間に生まれる人間関係や、商店街を中心とした地域のつながりは、現代社会で薄れつつあるものです。
品川歴史館の展示で紹介される西小山通り商店街の写真は、そのような地域のつながりが息づいていた時代の記録として貴重です。レジ袋有料化やキャッシュレス決済が当たり前の現代とは異なり、店主と会話を交わしながら買い物をする文化や、顔の見える関係の中で商売が行われていた時代の雰囲気を感じることができるでしょう。
若い世代にとっての新鮮な異文化体験
スマートフォンやインターネットが普及する以前の時代の暮らしは、デジタルネイティブの若い世代にとっては新鮮な「異文化体験」とも言えます。公衆電話を使って連絡を取り合ったり、手書きの手紙で近況を伝えたり、フィルムカメラで写真を撮影したりといった昭和時代の日常は、今の若者には想像もつかない世界かもしれません。
「昭和レトロ展」では、黒電話や昭和時代の学校備品、レコードプレーヤーなど、今では見られなくなった道具や電化製品を数多く展示しており、若い世代にとって新鮮な発見につながります。また、昭和時代と現代の電化製品を並べて展示することで、技術の進化や生活スタイルの変化を実感することもできます。
品川歴史館の「昭和100年しながわめぐり」展も、こうした昭和レトロへの関心の高まりを背景に企画されたもので、特に地域に根ざした視点から昭和時代を振り返る貴重な機会となるでしょう。
タイムトラベルを楽しむ:展示の楽しみ方
家族三世代で楽しむ:会話のきっかけづくり
「昭和100年しながわめぐり」展は、家族三世代で楽しめる展示です。祖父母世代にとっては、自分が若かった頃の懐かしい風景を振り返るひとときに。親世代にとっては、子ども時代の記憶がよみがえるきっかけに。そして子ども世代にとっては、祖父母や親の若かりし頃の暮らしを知る、貴重な学びの場となるでしょう。
展示を見ながら、「このお店、覚えてる?」「このあたりに住んでたんだよ」「この写真が撮られた頃、私はこんなことをしていたんだよ」といった会話が自然と生まれ、世代を越えた交流が深まります。特に子どもたちにとっては、教科書では学べない"生きた歴史"を家族の語りを通して実感できる、かけがえのない時間になるはずです。
写真と地図の読み解き方
写真や地図をより深く楽しむには、いくつかのポイントがあります。写真を見る際は、撮影された対象だけでなく、背景や周辺の様子、人々の表情や服装、看板のデザインなどにも注目してみましょう。そこには当時の世相や流行、生活文化が映し出されています。
地図を見る際は、現在の地図と比較しながら見ることで、変化を実感しやすくなります。道路の配置や建物の位置、地名などがどのように変わったのか(あるいは変わっていないのか)に注目すると、都市の発展の歴史をより深く理解することができます。
また、展示を見る前に自分が特に興味のある地域や時代を決めておくと、より焦点を絞って楽しむことができます。例えば、自分が住んでいる地域や通学・通勤している駅周辺がどのように変化してきたのかに注目してみるのも一つの方法です。
「昭和100年しながわめぐり」展 開催情報
- 期間
- 2025年4月29日(火・祝)~8月31日(日)
- 時間
- 9:00~17:00(入館は16:30まで)
- 会場
- 品川区立品川歴史館 1階特別展示室(品川区大井6-11-1)
- 休館日
- 月曜日(祝日の場合は開館)、5月7日(水)、7月22日(火)、8月12日(火)
- 料金
-
一般100円、小・中学生50円
※区立学校・区内在住の小・中学生、70歳以上の方、障害のある方は無料
※20名以上の団体は2割引 - アクセス
- JR大井町駅から徒歩約15分、または都営バス「大井町駅」から「品川郵便局前」下車徒歩1分
品川歴史館「昭和100年しながわめぐり」のまとめ
- 令和7年は昭和元年から100年目
- 品川歴史館リニューアル1周年記念展
- 関東大震災後から平成初期までを紹介
- 昭和の商店街や郵便局の写真を展示
- 写真と地図で品川区の変遷を体感
- 「昭和レトロ」への関心の高まり
- 家族三世代で楽しめる展示内容
- 会場は品川区立品川歴史館
- 期間は2025年4月29日~8月31日
- 入場料は一般100円、小中学生50円
- 70歳以上、障害者、区内小中学生は無料
- JR大井町駅から徒歩15分でアクセス