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2026.03.02

レアアースに代わるものは?日本の技術革新が切り拓く半導体やEVを守る戦略

レアアースに代わるものは、別の材料へ置き換えることだけではなく、省レアアース設計で使用量を減らすこと、都市鉱山のリサイクルで回収して循環させること、そして中国依存を避けるために供給源と精製ルートを多角化することを組み合わせた総合戦略です。この記事では、レアアースの基礎から、半導体やEVを支える用途、供給リスクの実態、日本企業の取り組み、南鳥島沖の海底資源までを整理し、日本の産業を守るために何が現実的な解となるのかを分かりやすく解説します。

-・- 目次 -・-
  • そもそもレアアースに代わるものとは?
    • レアアースとは簡単に言うと周期表の17元素を指す強力な磁性や発光機能を持つ戦略物資
    • レアアースとレアメタルの違いは特定の17元素グループか希少な金属全般の総称かという点にある
    • レアアースの見た目は金属状態では銀白色ですが普段は区別がつきにくい白っぽい粉末の酸化物として流通している
    • レアアースの使い道はモーター用の磁石や排ガスの浄化触媒など現代社会のハイテク製品に欠かせないものばかり
  • レアアースに代わるものの確保と流通戦略
    • レアアースの産出国は中国が世界シェアの約7割を占めており特定の国への極端な集中が課題
    • レアアースの日本国内での産出は限定的で特に重希土類は中国からの輸入に100%頼っているのが現状
    • レアアースを取り扱う日本企業は供給源を多角化するために豪州の鉱山支援や材料を減らす技術開発に注力しています
  • レアアースに代わるもの―可能性と未来―
    • レアアースは半導体の製造工程で研磨剤や絶縁膜として使われており代替には製造ライン全体の再設計が必要
  • 資源大国への大きな一歩!日本の海底に眠る膨大なレアアース確保への挑戦
    • レアアースの日本における未来は南鳥島沖での海底泥回収成功という快挙により10年後の国産化へ向けて前進しました
    • レアアースの産出国における中国1強の現状は精錬技術の独占と環境対策を含めたコスト面での課題が非常に大きい

レアアースに代わるものは?日本の技術革新が切り拓く半導体やEVを守る戦略 イメージ画像 作成:junk-word.com
レアアースに代わるものは?日本の技術革新が切り拓く半導体やEVを守る戦略 AIによるイメージ画像 作成:junk-word.com

そもそもレアアースに代わるものとは?

レアアースとは簡単に言うと周期表の17元素を指す強力な磁性や発光機能を持つ戦略物資

レアアースとは簡単に説明すると、スカンジウムとイットリウム、そしてランタノイドと呼ばれる15の元素を合わせた合計17種類の金属元素の総称です。これらは現代のデジタル社会や脱炭素社会を支えるために重要な戦略物資と見なされています。

最大の特徴は、原子の中にある電子の配置による独特の性質を持っていて、非常に強力な磁石を作ったり、光を効率よく出したり、化学反応を助けたりする能力があります。一方で、自然界では色々な種類のレアアースが混ざり合って見つかるため、目的の元素だけをきれいに取り出すには高度な技術が必要になるという難しさもあります。

レアアースとレアメタルの違いは特定の17元素グループか希少な金属全般の総称かという点にある

レアアースとレアメタルの違いは、レアメタルという希少な金属の大きなカテゴリーの中に、レアアースという特定のグループが含まれているという関係性にあります。レアメタルは存在量が少なかったり、取り出すのに高度な技術が必要だったりする非鉄金属(ひてつきんぞく)を幅広く指す言葉で、リチウムやコバルト、ニッケルなどもこの仲間に含まれます。

一方でレアアースは、レアメタルの中でもスカンジウムやイットリウムなど特定の17元素だけを指す、より限定的な呼び方です。日本独自の用語の使い方が、英語圏での理解と少しずれてしまう場合もあるため、ビジネスの現場では注意が必要だと言われています。

レアアースの見た目は金属状態では銀白色ですが普段は区別がつきにくい白っぽい粉末の酸化物として流通している

レアアースの見た目は、金属の単体の状態では一般的に銀白色で、軟らかく展性(てんせい)や延性(えんせい)に富んでいるという特徴があります。しかし、空気中では非常に酸化しやすく、表面に膜を作ってしまうため、私たちの手元に届く実務上の取引では、酸化物(さんかぶつ)や塩(えん)、合金(ごうきん)といった形で流通するのが一般的です。

特に酸化物の状態では、酸化ランタンや酸化ガドリニウム、酸化ジスプロシウムのように、どれも同じような白い粉末で見分けがつきにくいものが多いことが技術資料などでも注意喚起されています。

さらに、軽希土類(けいきどるい)ほど水分を吸いやすい性質があり、空気中の二酸化炭素などとも反応して変質しやすい繊細な一面もあるため、品質を保つための管理がとても重要です。

レアアースの使い道はモーター用の磁石や排ガスの浄化触媒など現代社会のハイテク製品に欠かせないものばかり

レアアースの使い道は、強力な磁力が必要なモーターや、地球環境を守るための排ガス浄化触媒など、私たちの暮らしを支えるハイテク分野に集中しています。特にネオジムやジスプロシウムを用いた永久磁石は、電気自動車や風力発電の心臓部として、省エネで力強い動きを実現するために必要不可欠な存在です。

また、自動車の排ガスをきれいにする三元触媒(さんげんしょくばい)では、セリウムが酸素を溜め込んだり放出したりするバッファのような役割を担い、有害物質の排出を抑えています。

他にも、スマートフォンや液晶ディスプレイの画面を磨き上げる研磨材、省エネ照明の蛍光体など、非常に幅広い分野で私たちの生活を裏側から支えているんです。

こうした多種多様な用途がある一方で、特定の元素が持つ特別な物理的性質を他の材料で完全に再現するのは、技術的にかなり難易度が高いのが現状です。だからこそ、今あるレアアースをどうやって減らすか、あるいはどうやって安定的に確保するかが、日本にとっての大きな課題となっています。

レアアースに代わるものの確保と流通戦略

レアアースの産出国は中国が世界シェアの約7割を占めており特定の国への極端な集中が課題

レアアースの産出国は、最新のデータによると中国が圧倒的なシェアを握っており、世界鉱山生産量390,000トンのうち、約69%にあたる270,000トンが中国によるもので、供給源が非常に限られた国々に偏っていることが分かります。

さらに注視すべきなのは、鉱山での採掘だけでなく、その後の分離・精製(せいせい)といった加工工程の集中度です。国際エネルギー機関の報告では、主要な元素の精製における上位3か国のシェアが約98%に達しており、中流工程での依存度はさらに深刻な状態にあると言えます。

このような供給の偏在(へんざい)は、ひとたび特定の国で輸出規制や地政学的なトラブルが発生すると、世界中のハイテク産業の足元を揺るがす大きなリスクに直結してしまいます。だからこそ、特定の国に頼り切らないための「レアアースに代わるもの」としての供給網づくりが、今まさに急ピッチで進められています。

レアアースの産出国は中国が世界シェアの約7割を占めており特定の国への極端な集中が課題 イメージ画像 作成:junk-word.com
レアアースの産出国は中国が世界シェアの約7割を占めており特定の国への極端な集中が課題 イメージ画像 作成:junk-word.com

レアアースの日本国内での産出は限定的で特に重希土類は中国からの輸入に頼っているのが現状

日本国内で使用されるレアアースは、そのほとんどを海外からの輸入に依存しており、国内鉱山による供給は極めて限定的なのが実情です。

経済産業省の資料「鉱物政策を巡る状況について」によると、日本の主な輸入相手国は中国やベトナム、タイなどですが、特にモーターの耐熱性を高めるために不可欠な重希土類(じゅうきどるい)に関しては、ほぼ全量を中国に依存という非常に偏った構造になっています。

このように特定の供給元に完全に頼り切る現状は、地政学的な変化によって日本の基幹産業が停滞しかねない大きなリスクをはらんでいます。こうした状況を打破するために、2026年2月には南鳥島(みなみとりしま)沖の海底に眠るレアアース泥の試掘が行われ、国内自給の可能性を探る国家レベルのプロジェクトが動き出しています。

現在は既存の輸入ルートの見直しに加え、都市鉱山と呼ばれるリサイクルの強化など、あらゆる手段で「中国一辺倒」からの脱却が進められている重要な局面にあるわけです。

レアアースを取り扱う日本企業は供給源を多角化するために豪州の鉱山支援や材料を減らす技術開発に注力しています

レアアースを取り扱う日本企業は、特定の国に依存しない安定した供給網を築くため、海外鉱山への直接的な投資や、使用量を劇的に減らす高度な技術開発を並行して進めています。

例えば、双日やJOGMECはオーストラリアのライナス社と協力体制を築き、中国以外のルートから日本へレアアースを供給できる仕組みを強化しています。双日は2025年10月に、豪州由来の重希土類を日本に輸入開始したと発表しており、供給網の多角化に向けた重要な動きとなっています。

また、材料そのものの使用量を抑える「省レアアース」の技術も日本の強みです。プロテリアルは、粒界拡散(りゅうかいかくさん)という独自の技術を活用して、ジスプロシウムやテルビウムなど高価な重希土類の使用を最小限に抑えつつ、磁石の性能を高めることに成功しています。

同様にTDKも、重希土類を大幅削減しても高い性能を発揮できるネオジムマグネットのラインナップを広げるなど、材料の供給リスクに左右されない製品づくりを徹底しています。

こうした日本企業の挑戦によって、資源の乏しい日本でも世界と渡り合える産業の強さが維持されているわけです。供給源の確保と技術革新の両輪でリスクを乗り越えようとする姿勢は、まさに日本のものづくりの真骨頂だと言えます。

レアアースを取り扱う日本企業は供給源を多角化するために豪州の鉱山支援や材料を減らす技術開発に注力 イメージ画像 作成:junk-word.com
レアアースを取り扱う日本企業は供給源を多角化するために豪州の鉱山支援や材料を減らす技術開発に注力 イメージ画像 作成:junk-word.com

レアアースに代わるもの―可能性と未来―

レアアースは半導体の製造工程で研磨剤や絶縁膜として使われており代替には製造ライン全体の再設計が必要

レアアースと半導体の関係は非常に密接で、製造工程で使われる研磨剤や、チップの性能を決める絶縁膜(ぜんえんまく)として、一部のプロセスで利用されています。特に酸化セリウムを用いた研磨剤は、回路の表面を原子レベルで平坦化するために広く使われており、高い除去速度と精度を両立できる優れた特性を持っています。

これに代わるものを導入しようとすると、研磨の速度や表面の傷の少なさ、さらには製品の歩留まりにまで影響が及ぶため、工程の大幅な見直しが必要になる場合が多いという課題があるんです。

また、半導体のさらなる微細化(びさいか)を進めるために、ランタンなどのレアアースを用いた高誘電率(こうゆうでんりつ)膜も注目されています。これらは回路が小さくなっても電気が漏れるのを防ぐ重要な役割を担っていますが、材料を置き換える際には界面の特性や長期的な信頼性を一から検証し直す必要があります。

代替の選択肢自体はいくつか存在しますが、製造現場でのシビアな性能基準を満たすには、依然としてレアアースの持つ物理的な強みが大きなアドバンテージとなっています。

半導体の世界におけるレアアースに代わるものの探求は、材料の変更にとどまらず、製造プロセスそのものを進化させる挑戦でもあります。最先端の現場では、レアアースを賢く使いながら、同時に依存度を下げていくという非常に高度な技術のバランス取りが続けられています。

資源大国への大きな一歩!日本の海底に眠る膨大なレアアース確保への挑戦

レアアースの日本における未来は南鳥島沖での海底泥回収成功という快挙により10年後の国産化へ向けて前進しました

レアアースの日本における自給への道は、南鳥島(みなみとりしま)沖の深海からレアアースを含む泥を回収することに成功したことで、大きな歴史的転換点を迎えました。探査船「ちきゅう」を用いたこのプロジェクトでは、深海から試料を回収できることが実証されました。

この海域には、中国・ブラジルに次ぐ世界第3位で、1600万トン規模とも言われるレアアース泥の埋蔵があると報じられています。しかし、専門家への取材によると、実際に国内生産が始まるまでには、不純物を取り除くためのプラント建設などの課題があり、10年以上はかかるとの見通しが示されています。

「研究の第一歩」を踏み出したばかりですが、これまで特定の国からの輸入に頼り切りだった現状を打破するための、希望の光が見えてきたと言えます。これから10年、20年先を見据えた日本の資源戦略として、この海底資源への期待は高まるばかりです。

レアアースの産出国における中国1強の現状は精錬技術の独占と環境対策を含めたコスト面での課題が非常に大きい

世界のレアアース市場は現在、中国が生産量の約69%、埋蔵量の約49%を占める「1強」の状態にあります。特に深刻なのは、鉱石から純度の高い金属を取り出す精錬工程のシェアで、世界全体の約91%が特定の国に集中しているというデータもあります。この圧倒的な独占状態は、日本が環境や安全に配慮しながら国内生産を目指すうえで、越えなければならない高い壁となっているんです。

こうしたシェアの偏りは、安全性や環境への対策コストの差が大きな要因となっています。日本や欧米に比べて対策コストが抑えられている地域は、市場で圧倒的な価格競争力を持ってしまいます。そのため、南鳥島などで自国生産を進めようとしても、どうしてもコスト面で不利になりやすいのが実情です。

有識者によれば、将来の安定供給のためには、たとえ高コストであっても自国生産という道を選ぶか、あるいは中国以外の国からの輸入ルートを徹底して増やすといった、戦略的な判断が求められています。

将来的には1日に最大350トンの泥を引き上げるという高い目標も掲げられていますが、実用化への道のりは決して平坦ではありません。しかし、コストという課題を乗り越えて自前の資源を確保することは、日本の産業界を将来の供給リスクから守るための、究極の防衛策になるのではないでしょうか。最新技術で泥の回収に成功した今は、まさに日本が資源大国へと脱皮するためのスタートラインに立ったのです。

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