海外留学や資格取得に挑戦したい、長期間旅行に出かけたい、仕事から離れてゆっくり過ごしたい。そんな希望があっても、会社を辞めてまで実現するのは難しいと感じる人は多いのではないでしょうか。サバティカル休暇は、会社に籍を置いたまま、数週間から数か月、場合によっては年単位で仕事を離れられる制度です。日本にも導入企業があり、2025年10月からは学び直しを支援する公的な給付金も始まりました。どのような人が取得し、休暇中のお金はどうなるのでしょうか。日本企業の事例や海外の制度を比較しながら、会社を辞めずに長期休暇を取るための方法を解説します。
- サバティカル休暇とは?会社を辞めずに休める仕組み
- サバティカル休暇を取るのはどんな人?日本企業の事例
- サバティカル休暇中の給料や生活費はどうなる?
- 勤務先で長期休暇を取得するにはどうすればよい?
- 会社を辞めずに長期休暇を取れる働き方をどう広げるか

サバティカル休暇とは?会社を辞めずに休める仕組み
サバティカル休暇と有給休暇・休職はどう違う?
サバティカル休暇とは、会社に在籍したまま、通常の年次有給休暇よりも長い期間を仕事から離れて過ごすための制度です。海外留学や資格取得などのスキルアップ、旅行や趣味、心身のリフレッシュなどに利用され、休暇を終えた後は元の会社に復職することを基本としています。
日本では、企業が独自にサバティカル休暇を設けるケースがあり、取得できる期間や勤続年数、休暇中の給与、認められる活動の範囲は勤務先によって異なります。社員の成長を支援する目的で導入する会社もあれば、長年働いた社員が心身を休め、今後のキャリアを考える機会として用意している会社もあります。
一般的な年次有給休暇との大きな違いは、法律上の位置づけです。年次有給休暇は労働基準法で定められた制度で、一定の条件を満たす労働者には取得する権利があり、休暇中も賃金が支払われます。サバティカル休暇は、会社が定めた条件に基づいて利用する制度で、無給になる場合もあります。
| 比較項目 | 年次有給休暇 | サバティカル休暇 | 一般的な休職 |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 休養や私生活など | 学び直し、旅行、休養など | 療養や個人的事情など |
| 期間 | 保有する有給休暇の日数内 | 企業ごとに設定 | 会社の規定や理由による |
| 給与 | 有給 | 有給・無給など企業による | 会社の規定による |
| 制度の根拠 | 労働基準法 | 企業の就業規則など | 企業の就業規則など |
休職も会社との雇用関係を維持しながら仕事を離れる仕組みですが、病気やけがの療養などを目的とすることが多い制度です。もっとも、会社によっては自己啓発休職や長期休職という名称で、サバティカル休暇に近い制度を設けている場合もあります。
ヨーロッパの長期バカンスとサバティカル休暇はどう違う?
ヨーロッパでは、夏に数週間の長期休暇を取り、家族旅行や帰省などを楽しむ人がいます。フランスでは1か月ほどバカンスを取ると聞いたことがある人もいるでしょう。このバカンスとサバティカル休暇は、どちらも仕事から長期間離れる仕組みですが、休暇の制度と給与の扱いが異なります。
EUの労働時間指令では、加盟国の労働者に年間最低4週間の有給休暇を保障することが定められています。フランスでは年間5週間の年次有給休暇が認められており、一定の条件で最大4週間を連続して取得できます。旅行や休養のために長期間休むバカンスは、基本的にこうした年次有給休暇を利用するものです。
フランスには、年次有給休暇とは別に、法律に基づくサバティカル休暇もあります。フランス政府の「Congé sabbatique du salarié dans le secteur privé」によると、労働協約などに別の定めがない場合、勤続3年以上、職業経験6年以上などの条件を満たした社員が、6か月から11か月の休暇を申請できます。休暇中は原則として無給となり、雇用契約を一時的に停止して仕事を離れます。取得にあたっては、企業による日程の延期や申請の拒否が認められる条件も定められています。
日本の年次有給休暇は、一般的な週5日勤務の場合、勤続6か月で10日、勤続6年6か月以上で年間20日が付与されます。日本の年間最大20日とフランスの年間5週間では、法律で認められる有給休暇の日数が異なります。
毎年の休養を目的とした長期バカンスと、人生やキャリアの節目に数か月間仕事を離れるサバティカル休暇は、異なる役割を持っています。フランスでは両方の仕組みが存在しており、旅行などで日常の疲れを癒す時間と、より長期の個人的な活動に取り組む時間が制度上も区別されています。
サバティカル休暇を取るのはどんな人?日本企業の事例
スキルアップとリフレッシュ、実際に休暇を取った人は何をしている?
サバティカル休暇の利用目的は、大きく分けると、スキルアップのために学ぶことと、仕事から離れて心身をリフレッシュすることの2つです。実際に休暇を取得した社員の体験談を調べると、海外留学に出かける人もいれば、旅行や趣味、家族との時間を楽しむ人もいます。
IT関連事業を手がけるCREFIL株式会社では、勤続2年で1か月間のサバティカル休暇を取得でき、休暇中も基本給の60%が支給されます。同社が2023年9月に公開した社員インタビューでは、プロジェクトマネージャーが約3週間マルタへ留学し、語学の学習と現地での生活を経験したことが紹介されています。本人は年初から上司と休暇の時期を相談し、担当プロジェクトの進行状況に合わせて取得する準備を進めていました。
同じ会社でも、別の社員はまったく違う過ごし方を選んでいます。CREFILが2026年10月28日に公開したサバティカル休暇の体験談では、デザインやマーケティングなどに携わる社員が、上高地でのハイキング、国内旅行、美術館巡りを楽しんだ体験が紹介されています。休暇の最初の1週間は体調を崩したものの、仕事を気にせず休養でき、残りの時間も自分のペースで過ごせたと振り返っています。
2019年には、フォルシア株式会社の20代の社員が、約3週間のサバティカル休暇を使って中南米を旅行した体験を公式ブログで公開しています。以前から訪れたいと思っていたチリやペルー、アルゼンチン、キューバなどを巡り、普段の生活とは違う環境で過ごす時間を持ちました。
ANA・LINEヤフー・ゴールドウインの休暇制度はどう違う?
日本企業が導入しているサバティカル休暇は、利用できる期間、勤続年数、休暇中の経済的支援が大きく異なります。企業の公式情報を比較すると、社員が自由な時間を使って幅広い活動に取り組める制度もあれば、自己研鑽(自分の知識や技術を高める活動)やキャリア形成を目的として条件を定めている制度もあります。
ANAは「多様な働き方(両立支援)」で、1か月から最大2年間の休業・休職期間を選べるサバティカル休暇制度を紹介しています。留学や自己啓発のほか、育児、介護などにも利用でき、休業・休職の理由に制限を設けていません。さらに、社員の生活基盤への不安を軽減するため、サバティカル補助金を支給する仕組みもあります。
LINEヤフーは「福利厚生・DE&I」で、勤続10年以上の正社員を対象に、2~3か月のサバティカル休暇を設けています。社員が自身のキャリアや経験、働き方を見つめ直し、さらなる成長につなげることを目的としており、長年勤務した社員にまとまった時間を提供する制度です。
ゴールドウインは「働きやすい職場環境の整備」で、2025年4月から導入したサバティカル休暇制度を公表しています。満3年以上在籍する正社員と契約社員が対象で、自己研鑽や長期ボランティア活動のために、1か月から最長6か月の無給休暇を取得できます。休暇中には月10万円の支援金が支給され、利用枠は年間10人です。
| 企業 | 休暇期間 | 主な条件・目的 | 金銭的支援 |
|---|---|---|---|
| ANA | 1か月~最大2年 | 留学、自己啓発、育児、介護など。理由の制限なし | サバティカル補助金あり |
| LINEヤフー | 2~3か月 | 勤続10年以上の正社員。キャリアや働き方の見直し | 公式案内に支給額の記載なし |
| ゴールドウイン | 1~6か月 | 満3年以上の正社員・契約社員。自己研鑽、長期ボランティアなど | 無給、月10万円の支援金 |
長期間の海外留学を希望する社員には、最大2年間まで休めるANAの制度が合うでしょう。これに対して、数か月間を使って今後のキャリアを考えたい社員にはLINEヤフーの制度が、自己研鑽やボランティア活動に集中したい社員にはゴールドウインの制度が参考になります。
ゴールドウインの場合、休暇中に得た知識や経験は、復職後のレポート提出などを通じて組織に共有する仕組みになっています。社員の成長を支援すると同時に、休暇の成果を会社でも生かすことを期待している制度設計です。
異業種への転職を考えている人にもサバティカル休暇は役立つ?
サバティカル休暇で新しい技術や資格を学びたい人には、現在の仕事に役立てたい人と、まったく別の業界に関心を持っている人がいるでしょう。この場合、休暇を取得する意味は、本人がその後どのような働き方を希望しているかによって変わります。
現在の仕事に関連するスキルアップを目指す人なら、休暇中に専門知識や資格を身につけ、復職後の業務で生かすことができます。今の会社に別の職種や部署がある場合は、これまでとは異なる分野を学び、社内で新しい仕事に挑戦する道も考えられます。
これに対して、現在の会社とは関係のない業界への転職を考えている人にとっては、会社に戻れる状態を維持しながら新しい分野を学べることが利点になります。新しい仕事に関心はあるものの、本当に自分に向いているのか分からない段階なら、一定期間勉強してから今後の進路を考えることもできるでしょう。
サバティカル休暇は復職を基本とする制度であり、企業側も経験を積んだ社員が戻ってくることを期待している場合があります。学習を終えた後に転職することを前提とするなら、休暇制度の利用目的や復職条件との関係を考える必要があります。
特に、企業から支援金を受ける制度では、会社が何を目的に費用を負担しているかが関係します。異業種への転職を目指すのは社員本人の選択ですが、支援金を受けられるかどうかは、会社の規定や承認条件によって決まります。
サバティカル休暇中の給料や生活費はどうなる?
休暇中の給料・社会保険料・住民税はどうなる?
休暇中の収入は、給与が支払われる場合、給与は支払われず支援金を受け取る場合、給与も支援金もない場合に分けて考えられます。CREFILのように基本給の一定割合が支給される会社なら収入の減少を抑えられますが、無給の休暇を数か月取得する場合は、その期間の生活費を貯蓄などで確保することになります。
さらに、会社に在籍し、健康保険と厚生年金の被保険者資格が続く場合は、休暇中に給与がなくても原則として社会保険料の負担が発生します。通常は給与から本人負担分を差し引いて会社が納付していますが、無給の期間は天引きできないため、本人負担分を会社へ振り込むなどの方法を決める必要があります。
住民税にも同じように支払いが発生します。住民税は原則として前年の所得を基に計算されるため、長期休暇に入って収入が減った場合でも、その時点で決まっている税額はすぐに減りません。給与から天引きできなくなったときには、本人が納付書などを使って納める方法に変更される場合があります。
教育訓練休暇給付金はどんな場合に利用できる?
会社を辞めずに留学や資格取得などに取り組みたい人には、2025年10月1日に始まった「教育訓練休暇給付金」という公的制度があります。厚生労働省の「教育訓練休暇給付金」によると、一定の条件を満たす会社員が、教育訓練を受けるために長期間の無給休暇を取得した場合、失業給付の基本手当に相当する金額が支給されます。
対象となるのは、雇用保険の一般被保険者です。休暇開始前に通算5年以上の雇用保険加入期間があり、休暇開始前2年間に原則12か月以上の被保険者期間があることも条件です。さらに、会社の就業規則や労働協約などに基づく休暇制度を利用し、事業主の承認を得て30日以上連続した無給の教育訓練休暇を取得することが求められます。
対象となる教育訓練には、大学や大学院、専修学校などでの学習、教育訓練給付金の指定講座を実施する施設での教育訓練、所定の条件を満たす語学留学や海外大学院での修士号取得などが含まれます。現在の仕事に関連するスキルアップだけでなく、本人が主体的に新しい知識や技術を学ぶことを支援する制度ですが、実際に受講する教育訓練が対象に該当するか確認する必要があります。
スキルアップ型とリフレッシュ型のサバティカル休暇では、教育訓練休暇給付金の扱いが異なります。旅行や休養を目的として長期休暇を取得する人は、原則として教育訓練休暇給付金の対象になりません。
給付金が支給される日数は、休暇開始前の雇用保険加入期間に応じて決まります。
| 雇用保険の加入期間 | 給付日数の上限 |
|---|---|
| 5年以上10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
給付額は休暇前の賃金や年齢などに応じて計算されます。支給の対象となる期間は原則として休暇開始日から1年間の範囲内で、30日ごとに休暇の取得状況を認定する手続きが必要です。
また、給付金を受け取ると、それまでの雇用保険加入期間は、原則として、その後の失業給付を受けるための条件や給付日数を計算するときに数えられなくなります。休暇を取得した後に転職や退職を考えている人にとっては、失業給付を受ける条件にも関係する制度です。
6か月間休むにはいくら必要?給付金と生活費を試算
教育訓練休暇給付金を利用できる場合でも、6か月間の休暇に必要なお金をすべて給付金でまかなえるとは限りません。実際に必要となる金額を考えるため、額面月収35万円の会社員が、6か月間の無給の教育訓練休暇を取得するケースを想定してみます。
厚生労働省が公表している教育訓練休暇給付金の資料には、額面月収35万円の場合、30日分の給付額が約19万5,000円となる試算が掲載されています。ここでは、この金額を使い、雇用保険の加入期間を10年以上20年未満とします。
この人が受け取れる給付金は最大120日分です。30日分の給付額を約19万5,000円として計算すると、120日分の合計は約78万円になります。6か月間を約180日と考えた場合、給付金で支えられるのは最大120日分で、残りの期間には支給がありません。
次に、休暇中の支出を計算します。今回は、住居費8万円、食費4万円、光熱費・通信費2万円、日用品・交通費など4万円で、毎月の生活費は18万円です。さらに、本人負担の社会保険料を月5万円、住民税を月1万5,000円、資格取得や学習のための受講料などを合計30万円と仮定します。
| 支出・収入 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 生活費 | 18万円 × 6か月 | 108万円 |
| 社会保険料 | 5万円 × 6か月 | 30万円 |
| 住民税 | 1万5,000円 × 6か月 | 9万円 |
| 受講料など | 6か月間の合計 | 30万円 |
| 支出合計 | 177万円 | |
| 教育訓練休暇給付金 | 約19万5,000円 × 4回相当 | 約78万円 |
| 自分で準備する金額 | 177万円 − 78万円 | 約99万円 |
この試算では、6か月間の休暇を取得するために、約99万円を自分で準備する計算になります。給付金の月額は厚生労働省が示した試算例を使い、生活費、社会保険料、住民税、受講料は説明のために設定した金額です。実際の給付額は年齢や休暇前の賃金を基に計算され、社会保険料や住民税は個人の条件によって決まります。
海外留学を考えている場合は、渡航費、現地の住居費、学費、生活費などが加わります。日本に住居を残したまま留学するなら、国内の家賃と留学先の住居費を同時に支払うことも考えられ、同じ6か月でも国内で学び直す場合より準備する資金が増えることがあります。
また、教育訓練休暇給付金は、休暇開始時に全額を一括で受け取る制度ではありません。休暇開始後、原則30日ごとに休暇の取得状況を申告し、認定を受けてから支給されるため、最初の給付金が振り込まれるまでの生活費も手元に必要です。受講料を休暇前に支払う場合は、その金額も含めて現金を準備します。
資金計画を立てるときは、休暇期間全体の収支と、毎月の支払い・給付金の入金時期を分けて計算します。6か月分の生活費を月別に書き出し、受講料や渡航費などの大きな支出を加えれば、休暇開始前に必要な資金を具体的に算出できます。

勤務先で長期休暇を取得するにはどうすればよい?
サバティカル休暇がない会社ではどの制度を調べればよい?
自分の勤務先にサバティカル休暇という名称の制度がなくても、別の休暇制度を利用して長期間仕事を離れられる場合があります。まずは就業規則や福利厚生の案内を調べ、教育訓練休暇、自己啓発休職、特別休暇、積立年次有給休暇などの制度が設けられているか確認します。
教育訓練休暇は、社員が学習や資格取得などに取り組むための休暇制度です。自己啓発休職も、会社が定めた目的や条件に沿って能力開発などに取り組む場合に利用されます。名称や利用条件は企業によって異なるため、希望する学習内容が認められるか、どれくらいの期間休めるかを調べます。
積立年次有給休暇は、有効期限を迎える年次有給休暇を一定の日数まで積み立てる仕組みです。病気の療養や家族の介護などに用途を限定している企業もあり、学び直しや旅行に使えるかは勤務先の規定によって変わります。
また、数週間程度の休暇で希望を実現できる人なら、通常の年次有給休暇をまとめて取得する方法もあります。土日や祝日と組み合わせれば、保有する有給休暇の日数を使って連続した休みを設けることもできます。

長期休暇の申請から復職まで、会社と何を取り決める?
長期休暇を取得するまでの4ステップ
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STEP 1
利用できる休暇制度と条件を調べる
就業規則や福利厚生の案内を確認し、取得条件、休暇期間、給与、支援金の有無を調べます。学び直しが目的なら、教育訓練休暇給付金の対象となる教育訓練かどうかも確かめます。
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STEP 2
上司や人事担当者に相談する
希望する休暇期間と目的を説明し、担当業務の引き継ぎや人員配置について相談します。勤務先に制度がない場合は、別の休職制度や個別の取り決めによって休暇を取得できるか尋ねます。
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STEP 3
休暇中の条件を文書で取り決める
開始日と終了日、給与や支援金、社会保険料の負担、休暇中の連絡方法、復職後の勤務条件などを整理します。教育訓練休暇給付金を利用する場合は、会社側に必要な手続きも共有します。
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STEP 4
休暇開始後の手続きと復職準備を進める
給付金を利用する場合は所定の申請を行い、教育訓練の受講状況を記録します。復職前には勤務開始日や担当業務を会社に確認し、仕事を再開する準備を進めます。
サバティカル休暇や自己啓発休職など、復職を予定する長期休暇では、休暇が終わった後にどの部署へ戻るのか、勤務内容や勤務時間がどうなるのかも事前に話し合っておきます。休暇中に組織の体制や担当業務が変わる場合に備え、復職前に面談の機会を設けて、仕事を再開する条件を確認しておくとよいでしょう。
長期休暇を申請する社員は、担当している仕事を整理し、ほかの社員が対応できるように資料や手順をまとめておくと、引き継ぎを進められます。休暇を取得する時期についても、担当プロジェクトの終了時期や繁忙期との関係を考え、上司と相談しながら調整します。
休暇中に緊急の連絡が必要になった場合の対応も、会社と事前に決めておきます。
会社を辞めずに長期休暇を取れる働き方をどう広げるか
転職するかもしれない社員に企業が支援金を出す意味はある?
サバティカル休暇を取得した社員が、休暇中に新しい知識や技術を身につけて元の会社に戻るのであれば、企業にとっても制度を導入する意味があります。では、社員が異業種への転職を考えていて、休暇終了後に退職してしまったらどうでしょうか。
私は以前、Webデザインを勉強するために会社を辞めた経験があります。それまで勤めていた会社はWebデザインとはまったく関係のない業界で、私は新しい技術を学び、別の業界へ進むことを決めていました。もし当時の会社にサバティカル休暇があったとしても、利用しなかったと思います。すでに転職する意思が固まっていたので、会社に戻るつもりがないのに長期休暇を取得することには後ろめたさを感じますし、仕事を引き継ぐ同僚にも申し訳なく思うからです。
こうした経験から、私はサバティカル休暇を、休暇終了後に元の会社へ復職することを前提とした制度にする方がよいと考えています。企業が社員の成長を支援し、その経験を復職後の仕事に生かしてもらうという目的が明確になれば、社員も会社から支援を受ける理由を説明できます。休暇を取得する本人にとっても、復職する意思があることを前提に申請する方が、同僚や上司の理解を得やすいのではないでしょうか。
学習する内容まで現在の仕事に限定する必要があるのかという疑問も生まれます。私は、復職する意思があるなら、今の仕事と直接関係のない分野を学ぶことも認めてよいと思います。新しく身につけた知識が将来の仕事に役立つこともあれば、異なる分野を経験したことで現在の仕事の魅力を再認識する人もいるでしょう。
転職を考えているものの、まだ決断していない社員についても同様です。新しい分野を学んだ結果、元の会社で働き続けたいと思う人もいれば、別の道に進みたいという気持ちが強くなる人もいるでしょう。企業にとっては社員が退職するリスクがありますが、休暇を認めることで経験のある社員が残ってくれるのであれば、それも制度を設けるメリットになります。
大切なのは、休暇を申請する時点で復職する意思があるかどうかだと思います。将来の転職まで制限するのではなく、社員が元の会社へ戻ることを前提に制度を利用し、企業もその復職を見込んで支援する。この関係を明確にしたうえで、支援金の条件や復職後の扱いを定める方が、双方にとって納得できる制度になると考えています。
長期休暇を取りやすくするには、職場に何が必要か?
復職を前提とするサバティカル休暇でも、社員が気兼ねなく長期間休むには職場の協力が必要です。数か月間仕事を離れるとなれば、その間の業務を引き受ける同僚がいます。人手が足りない職場では、自分が休むことで周囲の仕事が増えると考え、制度を利用することに後ろめたさを感じる人もいるでしょう。
制度が整っていても取得をためらう人がいるという問題は、男性の育児休業にも見られます。厚生労働省の「育児休業制度特設サイト」によると、男性の育児休業取得率は2024年度調査の40.5%から2025年度調査では50.9%へ上昇しました。取得する男性が増えているのは確かですが、法律で認められた育児休業でも、職場の雰囲気や周囲への気兼ねが取得をためらう理由になっています。
実際に厚生労働省は、2026年9月に公開した「働きながら育児・介護を両立」の中で、男性が育児休業を取得しなかった理由として、収入の減少への不安に加え、職場の雰囲気や周囲の理解不足が挙げられていることを紹介しました。また、休暇を取得した社員の仕事を引き受ける人に負担が集中する問題も取り上げています。
サバティカル休暇にも、同じような問題が生じると思います。社員が留学や学び直しのために長期間休むことを認められても、職場に残る社員からすれば、その間の仕事を誰が担当するのかが気になるはずです。自分たちは忙しく働いているのに、ほかの社員は会社から支援金を受け取って長期間休めるという状況になれば、不公平だと感じる人もいるでしょう。その不満を、休暇を取る社員への理解が足りないという理由だけで片づけるべきではないでしょう。
私は、こうした問題を解決する責任は、休暇を申請する社員よりも制度を運用する企業にあると考えています。長期休暇を認めるなら、代替要員を確保したり、業務量を調整したりして、特定の社員に負担が集中する状況を防ぐ必要があります。仕事を引き受ける社員への手当や評価を検討することも、職場の納得を得る方法の一つでしょう。社員が休暇を取得するたびに残業が増えるような職場では、制度を利用したいと思っていても申請をためらってしまいます。
また、誰がどのような条件で休暇を取得できるのか、希望者が多い場合はどう調整するのかといったルールも明確にした方がよいと思います。勤続年数や業務の都合などによって取得できる人とできない人が分かれるのであれば、その理由を社員が理解できる形にする必要があります。上司との関係や周囲の雰囲気によって取得の可否が変わるようでは、制度に対する不信感が生まれてしまいます。
制度があっても実際に使えないなら意味がありません。社員が周囲に遠慮せず利用できてこそ、サバティカル休暇を導入した価値が生まれるのではないでしょうか。
サバティカル休暇まとめ
- サバティカル休暇は在職中の長期休暇制度
- 取得期間や給与は企業ごとに異なる
- フランスでは年次有給休暇と別制度
- 利用目的はスキルアップとリフレッシュ
- ANAでは最大2年間の休業・休職が可能
- LINEヤフーは勤続10年以上が対象
- ゴールドウインは月10万円の支援金
- 異業種への転職では復職との関係が課題
- 無給期間中も社会保険料などの負担がある
- 教育訓練休暇給付金には受給条件がある
- 給付日数は加入期間に応じて最大150日
- 6か月間の試算では準備資金は約99万円
- 勤務先に制度がなければ別の休暇を調べる
- 休暇の申請前に引き継ぎと復職条件を確認
- 企業には休暇取得者と同僚への配慮が必要

