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2026.10.12

トイザらスが倒産!玩具市場は過去最高なのになぜ?少子化でも伸びるキダルト市場との明暗

日本トイザらスが2026年10月、民事再生法の適用を申請しました。負債は約132億円で、おもちゃ量販店として過去最大の倒産です。少子化やネット通販の普及で、玩具市場そのものも縮小しているように思えます。実際には、日本の玩具市場は2025年度に過去最高を更新しました。子どもの数が減っているのに、なぜ玩具市場は伸びているのでしょうか。そして、成長市場の中でトイザらスはなぜ売上を落とし続けたのでしょうか。市場を伸ばすキダルトと呼ばれる大人の消費、成長する商品や専門店、トイザらスの事業モデルを順番に見ていくと、現在のおもちゃ市場で起きている大きな変化が見えてきます。

-・- 目次 -・-
  • トイザらスは倒産してどうなる?
    • 負債132億円で民事再生、店舗と事業は継続予定
    • 民事再生とは?破産との違いを簡単に説明
  • 少子化なのに玩具市場は過去最高になっている
    • 2025年度の玩具市場は1兆1,664億円、5年連続で過去最高
    • 子どもが減っても市場が伸びる理由は「買う人」の変化
  • 今の玩具市場では何が売れているのか
    • トレカ、カプセルトイ、ぬいぐるみなど大人も買う商品が成長
    • 「何でも売っている大型店」より専門店が伸びている
  • 市場が伸びているのにトイザらスはなぜ倒産したのか
    • 売上高はピーク約1,944億円から約752億円まで減少
    • 大型店・ファミリー中心という強みが市場変化とずれた
    • キダルト対応は始めていた、それでも間に合わなかった
  • PPIHはトイザらスをどう変えようとしているのか
    • PPIHが評価したのはファミリー層との接点
    • 大人まで楽しめる店に変えれば再生できるのか
  • トイザらス倒産から見える「おもちゃ屋」の変化
子どもの頃の記憶と、大人になって自分のために玩具を選ぶ現在を重ねたイメージイラスト(生成AI) キダルト需要の広がりで、おもちゃ屋を訪れる人の姿も変わっています。作成:junk-word.com
子どもの頃の記憶と、大人になって自分のために玩具を選ぶ現在を重ねたイメージイラスト(生成AI) キダルト需要の広がりで、おもちゃ屋を訪れる人の姿も変わっています。作成:junk-word.com

トイザらスは倒産してどうなる?

負債132億円で民事再生、店舗と事業は継続予定

日本トイザらスは2026年10月1日、東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請し、10月6日に再生手続き開始決定を受けました。帝国データバンクによると、負債は債権者約1,100人に対して約132億円で、おもちゃ量販店として過去最大の倒産です。

倒産と聞くと、トイザらスの店舗がすぐになくなるように感じますが、今回の民事再生では営業が続いています。帝国データバンクによると、三菱UFJ銀行から事業継続に必要なDIPファイナンスを受け、再生手続き開始後も平常通り営業しています。

同社は、ドン・キホーテなどを展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)と、その完全子会社オペレーションシェアードサービスとの間で事業譲渡契約を締結しました。裁判所の許可などを前提として、10月30日に事業譲渡を行う予定です。

今回起きているのは、店舗をすべて閉じて事業を終える形ではなく、営業を続けながらPPIHグループへの事業譲渡を進める再建です。

民事再生とは?破産との違いを簡単に説明

ニュースでよく聞く「民事再生」ですが、破産との違いまで知っている人は少ないかもしれません。

裁判所の説明では、通常の民事再生は、経済的に苦しい状況にある法人や個人が再生計画案を作り、債権者の多数の同意と裁判所の認可を得て、計画に沿って返済しながら事業や経済生活の再建を目指す手続きです。

破産は、破産管財人が債務者の財産を金銭に換え、債権者へ分配する手続きです。民事再生は事業の再建を目指す仕組みで、今回の日本トイザらスも営業を継続しながら手続きを進めています。

民事再生 再生計画に基づいて債務を整理し、事業の再建を目指す
破産 財産を金銭に換え、債権者への配当を進める

では、日本トイザらスが経営再建を迫られたのは、そもそも子ども向けのおもちゃが売れなくなったからなのでしょうか。市場全体を見ると、逆の動きが起きています。

少子化なのに玩具市場は過去最高になっている

2025年度の玩具市場は1兆1,664億円、5年連続で過去最高

日本では少子化が続いています。総務省によると、2026年4月1日時点の15歳未満人口は1,329万人で、前年より35万人減りました。45年連続の減少で、過去最少です。

子どもが減れば、おもちゃを買う人も減り、玩具市場も縮小していくように思えますが、実際には、それとは反対のデータが出ています。

日本玩具協会の2025年度玩具市場規模調査によると、国内の玩具市場は前年度比106.3%の1兆1,664億円となりました。現在の方法で調査を始めた2001年以降で最大となり、2021年度から5年連続で過去最高を更新しました。

  • 子どもの数:1,329万人、45年連続で減少
  • 玩具市場:1兆1,664億円、5年連続で過去最高

日本玩具協会の調査は、メーカーが設定した希望小売価格(上代価格)をもとに国内玩具市場の規模を算出しています。少子化が続く中でも、この基準で見た市場規模は拡大しています。

子どもが減っても市場が伸びる理由は「買う人」の変化

玩具市場が少子化の中でも成長している理由の一つは、玩具を買う層が広がっていることです。

近年は「キダルト」という言葉が玩具業界で使われるようになりました。Kid(子ども)とAdult(大人)を組み合わせた言葉で、子ども向けとされてきた玩具やキャラクター商品を、自分の趣味として購入して楽しむ大人のことです。

昔遊んだキャラクターの商品を集める人もいれば、トレーディングカード、フィギュア、プラモデル、ぬいぐるみなどを趣味として楽しむ人もいます。大人になれば子どもの頃より自由に使える金額が増えるため、限定商品やコレクション性の高い商品にも需要が生まれます。

帝国データバンクも、2025年度の玩具店市場について、成長をけん引する需要が大人向けの「キダルト」へ変化していると分析しています。

現在の玩具市場は「子どもの人数」だけでは規模を説明できない市場へ変わってきました。子どもと保護者に加えて、大人自身が重要な買い手になっています。

では、大人を含む新しい消費者は、実際に何を買っているのでしょうか。

今の玩具市場では何が売れているのか

トレカ、カプセルトイ、ぬいぐるみなど大人も買う商品が成長

2025年度の玩具市場で大きな存在感を示しているのが、カードゲーム・トレーディングカードです。日本玩具協会によると、市場規模は約3,384億円で、玩具市場全体の約30%を占めるまでになりました。

ポケモンカードゲームやデュエル・マスターズTCG、遊戯王OCGなどが市場拡大を支えました。遊ぶだけでなく、好きなカードを集めるコレクション需要があることも、この分野の特徴です。

トレカ以外にも成長している分野があります。2025年度のぬいぐるみ市場は前年度比138.2%となり、「モンチッチ」や大阪・関西万博の「ミャクミャク」、スーパーマリオ、星のカービィ、ポケモンなどのキャラクター商品が市場を押し上げました。ホビー分野でもプラモデルやフィギュアが伸びました。

  • カードゲーム・トレーディングカード
  • ぬいぐるみ
  • プラモデルやフィギュアなどのホビー商品
  • 大人も楽しむカプセルトイ
  • キャラクター商品やコレクション商品

商品を見ると、現在の玩具消費には「子どもに買い与える」という目的以外に、自分で集める、好きな作品を応援する、引く体験を楽しむ、飾るといった複数の楽しみ方が加わりました。

市場の変化は商品だけにとどまりません。どのような店で買うのかという点でも、大きな差が生まれています。

「何でも売っている大型店」より専門店が伸びている

玩具そのものの市場が過去最高になる一方で、どの店でも同じように売上が伸びているわけではありません。帝国データバンクの「玩具店(おもちゃ店)業界動向調査」によると、2025年度の玩具店市場は7,620億円で、前年度から8.6%増加しました。2015年度以降で最高です。

ここでいう7,620億円は、前に紹介した日本玩具協会の1兆1,664億円とは調べているものが違います。日本玩具協会はメーカーが設定した希望小売価格をもとに玩具そのものの市場規模を算出しているのに対し、帝国データバンクは玩具店を営む事業者の売上高を集計しています。そのため、1兆1,664億円と7,620億円を直接比べて、市場が増えた、減ったと判断することはできません。

帝国データバンクの調査で注目したいのは、7,620億円という市場規模よりも、どの業態が売上を伸ばしているのかという点です。

2020年度の売上を100とした2025年度の指数を見ると、カプセルトイ専門店は385、トレカ専門店は307まで伸びました。従来型のおもちゃ店は151です。

店舗の種類 2025年度売上指数
2020年度=100
カプセルトイ専門店 385
トレカ専門店 307
従来型のおもちゃ店 151

2025年度に玩具店市場が増えた金額は602億円。その7割超をカプセルトイ専門店とトレカ専門店が占めました。両業態の市場シェアは2015年度の9.9%から2025年度には27.5%まで拡大しました。

玩具店市場全体は伸びていますが、その成長を強くけん引しているのは、カプセルトイやトレカのように特定の商品に絞った専門店です。

カプセルトイなら、欲しいキャラクターの商品を探すことや、何が出るか分からない体験そのものが来店目的になりますし、トレカ専門店なら、カードを買うことに加え、対戦やコレクション、売買など特定の趣味を深く楽しめます。

帝国データバンクは、今後のおもちゃ店について「何でもある店」から「行く理由のある店」への転換が求められると分析しました。

この市場変化と照らし合わせると、トイザらスが直面していた問題も見えてくるでしょう。

市場が伸びているのにトイザらスはなぜ倒産したのか

売上高はピーク約1,944億円から約752億円まで減少

トイザらスが日本で急成長したのは1990年代です。1989年に米トイザらスと日本マクドナルドの合弁で日本法人が設立され、1991年に国内1号店を開業しました。

広い店舗に大量の商品を並べ、豊富な品ぞろえを実現するスタイルは、それまでの日本のおもちゃ店とは違う買い物体験でした。2000年には国内100店舗を達成し、2002年にはベビー用品を扱う「ベビーザらス」も始まり、売上高は2007年1月期に約1,943億6,400万円まで拡大しました。

その後は長期的な減少に転じ、2025年12月期の売上高は約752億1,100万円まで落ち込み、ピーク時の4割弱となりました。当期純損益も8期連続の赤字です。

  • 2007年1月期:売上高 約1,943億6,400万円
  • 2025年12月期:売上高 約752億1,100万円

同じ時期に玩具市場全体は過去最高へ向かっています。問題は「おもちゃが売れなくなった」という市場全体の縮小ではなく、トイザらスが成長してきた事業モデルと、消費者の買い方とのずれにありました。

大型店・ファミリー中心という強みが市場変化とずれた

トイザらスの強みだったのは、広い店舗へ行けば、子どものおもちゃからゲーム、ベビー用品まで豊富な商品を一度に選べ、家族で車に乗って大型店へ出かける買い物とも相性がよかったことです。

その前提が少しずつ変わりました。

ネット通販が普及すると、商品名が分かっていれば自宅から価格を比較して注文できます。家電量販店などでも玩具やベビー用品を扱うようになり、大型玩具専門店以外でも商品を買えるようになりました。ゲームソフトではダウンロード販売が広がり、店舗へ買いに行く需要そのものが減っています。

少子化もファミリー向け市場には重くのしかかります。2026年の15歳未満人口は過去最少です。その一方で、市場の成長部分ではキダルト、トレカ、カプセルトイなど大人の趣味消費が存在感を増しました。

つまり、トイザらスを成功させた時代から、何が売れるか、誰が買うか、どこで買うかの3つが変わりました。

大型店の強みは、多くの商品を置けること。その広い売り場を維持するには相応の店舗運営コストもかかります。消費者の買い方が「幅広い商品から選ぶために大型店へ行く」形から、「欲しい商品をネットで買う」「特定の趣味の専門店へ行く」といった形へ分かれると、大型総合店の強みを生かしにくくなります。

トイザらスも、都市型店舗への転換、キダルト向け商品の強化、EC販売などを進めていました。市場の変化をまったく見ていなかったというより、長期間続いた売上減少の中で、会社全体の事業構造を変えるまでの成果を出せなかったと見る方が実態に近いでしょう。

キダルト対応は始めていた、それでも間に合わなかった

トイザらスが大人向け玩具への転換を進めていたことを示す象徴的な店舗が、上野マルイ店。

2026年7月17日、東京の上野マルイに大人向け玩具を中心に扱う「トイザらス 上野マルイ店」がオープンしました。キダルトを明確に意識した新しい店舗です。

上野マルイを運営する丸井グループの発表によると、オープン当日は開店前から約100人が並び、初日の売上高は計画比386%となり、Z世代やミレニアル世代、訪日客など、これまでの「子どもと家族」というイメージより広い顧客を集めました。

この結果から、トイザらスというブランドとキダルト需要の組み合わせには、一定の可能性があったのでしょう。

一方、上野マルイ店が開業したのは民事再生を申請する約2カ月半前です。新業態が好調にスタートしても、全国の店舗網を抱える会社全体の売上や収益を短期間で変えることは困難です。

トイザらスもキダルト需要を取り込む方向へ動き、大人向け店舗の展開などを始めていましたが、長年続いた業績悪化を立て直すまでには至りませんでした。

この事業を引き継ぐのが、ドン・キホーテを展開するPPIHです。

PPIHはトイザらスをどう変えようとしているのか

PPIHが評価したのはファミリー層との接点

PPIHは2026年10月1日、日本トイザらスとの事業譲渡契約締結を発表しました。譲り受けるのは、店舗やオンラインで展開する玩具・子ども用品などの販売事業です。

PPIHはドン・キホーテなどを通じて若者や訪日客を取り込んできており、日本トイザらスは乳幼児、子ども、子育て世代との接点を長年築いています。

PPIHが今回の事業取得で狙っているのは、この顧客層をグループに加えることです。同社はトイザらスの店舗網や顧客基盤を取り込み、新たな顧客層と事業領域を獲得し、LTV(顧客生涯価値)の拡大につなげる方針を示しました。

LTVとは、一人の顧客が企業との取引を続ける間に、どれだけの売上や利益をもたらすかを表す考え方です。乳幼児期から子育て世代、その先まで接点を持てれば、長い期間にわたって商品やサービスを利用してもらえる可能性もあるでしょう。

今回の事業取得には、これまでPPIHグループとの接点が相対的に弱かった乳幼児やファミリー層まで、顧客層を広げる意味があります。

大人まで楽しめる店に変えれば再生できるのか

トイザらス再建では、キダルト商品を増やすことに加え、実店舗の価値を高めることも課題になるでしょう。

市場データから分かるのは、大人向け需要が伸びていることに加え、「店へ行く目的」がはっきりした業態が成長していることです。

トレカ専門店ではカードを探し、カプセルトイ専門店では回す体験を楽しむなど、欲しい商品を決めてネット通販で買う場合とは違う、実店舗ならではの目的があります。

トイザらスにも、実物のおもちゃを見て、子どもと一緒に選べるという特徴があります。上野マルイ店では大人向け商品にも反応が集まりました。この二つを生かせれば、子ども向け大型玩具店という従来の枠から、家族から大人までが遊びに行く売り場へ広げる余地があります。

PPIHが持つ売り場づくりや商品発掘の力と、トイザらスが持つ玩具専門店としての知名度、ファミリー層との接点をどう組み合わせるか。再建後の店舗を見るうえで大きなポイントです。

トイザらス倒産から見える「おもちゃ屋」の変化

玩具市場では、大人が子どものために買うだけでなく、自分のためにも買うようになり、消費の形が広がりました。

子ども向けのおもちゃでは、遊ぶのは子どもでも、実際に購入するのは親や祖父母というケースが多くあります。誕生日やクリスマスなども購入の機会になります。

キダルトの場合は、欲しいと思った大人が自分のお金で購入し、好きなキャラクターの商品を集めたり、新商品が出るたびに購入したり、トレカやフィギュアを継続して楽しんだりできます。少子化が進んでも玩具市場が拡大している背景には、こうした買い方の変化もあります。

この変化を取り込むには、大人向け商品の強化は有効です。さらにトイザらスには、子どものおもちゃに加え、ベビーザらスを通じて乳幼児のいる家庭と早い段階から接点を持てる強みがあります。赤ちゃんが生まれた家庭から子どもの成長後まで、長く利用してもらえる点は、トレカ専門店やカプセルトイ専門店にはない特徴です。

PPIHがLTVの拡大を掲げていることを考えると、再建後のトイザらスには、乳幼児のいる家庭から子ども、さらに自分の趣味を楽しむ大人まで、年齢とともに利用できる店へ変わる道もあります。

私は子どものころ、駅前のおもちゃ屋に行くのが大好きでした。たくさん並んだおもちゃを見ているだけでわくわくし、欲しくなって駄々をこねることもありました。父や母はなかなか買ってくれませんでしたが、それでも、おもちゃ屋へ行った時間そのものが楽しい記憶として残っています。

だからこそ、トイザらスの再建でも、家族でおもちゃを見て選べる場所としての良さは残してほしいと思います。そのうえで、大人になっても行きたくなる商品や体験を増やせれば、「子どもの頃に行った店」から「大人になっても行く店」へ変わることができるでしょう。

少子化でも玩具市場が過去最高になった背景の一つには、キダルトと呼ばれる大人の需要拡大があります。トイザらスがその変化を取り込めるかどうかは、商品の品ぞろえだけでなく、子どもから大人まで長く付き合える店を作れるかにかかっていると考えます。

トイザらス倒産と玩具市場まとめ

  • 日本トイザらスが民事再生を申請
  • 負債は約132億円
  • 店舗は営業を継続
  • PPIHへ事業譲渡予定
  • 玩具市場は1兆1,664億円
  • 5年連続で過去最高を更新
  • キダルト需要が市場をけん引
  • トレカやぬいぐるみが成長
  • 専門店の売上が大きく伸長
  • トイザらス売上はピークの4割弱
  • 大型店モデルと市場変化にずれ
  • 上野マルイ店はキダルトを意識
  • PPIHはファミリー層に注目
  • 再建では実店舗の価値も焦点

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