大学受験生ならみんな知ってる「赤本」が、2024年(2025年版)に20年ぶりの変身を遂げました。あの威圧感のある太いフォントから、親しみやすい丸みのあるデザインに生まれ変わったんです。でも、これだけ大胆にイメージチェンジしたら売上に影響があったかというと......ほとんど変わらなかったんだとか。受験生にとって赤本は「見た目がカッコいいから買う」ものじゃなくて、「志望校に受かるために必要だから買う」ものなんですよね。
- 青本と黒本、それぞれの「推し」ポイント
- 赤本の「赤」は最初からじゃなかった
- 一つの会社で学術書と受験参考書を両方作る理由
- 江戸時代の「草双紙」も色で区別されていた
- 大河ドラマで注目される江戸の出版文化
受験参考書の「色の使い分け」が意外と面白い
青本と黒本、それぞれの「推し」ポイント
大学受験の世界では、出版社ごとに表紙の色を変えて差別化を図っています。青本は駿台予備校が出している過去問で、主に共通テストと、東大や京大といった難関大学に特化したシリーズがあり、解説が詳しいことが特徴とされています。
一方の黒本は河合塾が手がけていて、共通テスト対策が中心です。赤本が全国の幅広い大学をカバーしているのに対して、青本と黒本はそれぞれ得意分野に集中しています。
この「色の使い分け」って、受験生にとってすごく便利なシステムなんです。赤本なら幅広い大学、青本なら難関大特化、黒本なら共通テストと、色を見ただけで「あ、これは自分が欲しい情報だ」って瞬時に分かるようになってるんですから。
赤本の「赤」は最初からじゃなかった
赤本って、最初から赤い表紙だったわけじゃないんです。創刊当初は大学ごとに緑や黄色など、バラバラの色を使っていました。オレンジ色で統一したのがその10年後(1965年版にオレンジ色で統一)で、さらに2年後には柿色になり、1986年版に現在の色に近い赤色に変更されました。
実は「赤本」という名前も、正式名称ではありませんでした。長年「大学入試シリーズ」が正式名称でしたが、表紙が赤いことから受験生の間で自然に「赤本」と呼ばれるようになったんです。編集部は正式名称にこだわっていたものの、2024年の創刊70周年をきっかけに「大学赤本シリーズ」に名称を変更しました。
つまり、表紙の色だけでなく、名前も70年かけてようやく「赤本」が公式になったというわけです。受験生に愛され続けてきた通称が、ついに正式名称の一部になったんですね。 赤本のデザインの変遷については、「赤本ウェブサイト 60年のあゆみ」で紹介されています。最新の赤本が気になる方は、「教学社の公式ページ」をチェックしてみてください。
一つの会社で学術書と受験参考書を両方作る理由
赤本を発行しているのは、京都市に本社を置く「世界思想社教学社」という出版社です。1948年に創業された同社は、「世界思想社」として学術専門書・教養書を、「教学社」として大学入試過去問題集"赤本"をはじめとする学習参考書を出版するという、珍しい二つの顔を持っています。
普通の出版社だったら、どちらか一方に特化しそうなものですが、なぜ両方やっているんでしょうか。
社名に込められた思いを見ると、その理由が分かります。「広く世界のあらゆる思想を受け止めて、理解し、包容し、力の世界ではなく平和な世界を築くために社会に貢献したい」という創業の理念があるんです。学術書も受験参考書も、どちらも「学ぶ人を支える」という同じ目的に向かっているってことなんですね。
江戸時代にもあった「赤本・黒本・青本」
江戸時代の「草双紙」も色で区別されていた
「色の名前がついた本」って、現代の受験参考書だけの話じゃないんです。今年の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」で注目されている江戸時代にも、赤本・黒本・青本といった色とりどりの本が出版されていました。
江戸時代の出版文化を調べてみると、「草双紙」と呼ばれる絵入りの娯楽本が表紙の色で区別されていたとされます。赤本は子ども向けの昔話、黒本と青本は歌舞伎や浄瑠璃、史話、伝記などをベースにした読み物でした。青本は若者向け、黒本は大人向けとされることもありますが、実際には両者の区別は曖昧で、内容や対象年齢で厳密に分けられていたわけではありません。
そして時代が進むと、大人向けの風刺小説「黄表紙」が登場します。大河ドラマの主人公・蔦屋重三郎も、こうした色とりどりの本を手がけた人物として知られています。
大河ドラマで注目される江戸の出版文化
2025年の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」では、横浜流星さんが蔦屋重三郎を演じています。蔦屋重三郎は、喜多川歌麿や東洲斎写楽といった有名絵師を世に送り出したことから、「江戸のメディア王」とも称されています。
江戸時代の草双紙も現代の受験参考書も、どちらも「色」が読者にとって便利な目印になっています。時代は違えど、出版業界では色による分類が重要な役割を果たしているという共通点は興味深いものがありますね。
大河ドラマで蔦屋重三郎が注目される今だからこそ、江戸時代の「草双紙」と現代の受験参考書の類似点が見えてきます。色で本の種類を区別するという発想は、時代を超えた知恵といえるかもしれません。
赤本のまとめ
- 赤本は2024年に20年ぶりデザイン変更
- デザイン変更は売上にほぼ影響なし
- 受験参考書業界は色による差別化競争
- 青本は駿台、黒本は河合塾が発行
- 赤本は全国の幅広い大学をカバー
- 青本は難関大学に特化
- 黒本は共通テスト対策が中心
- 赤本は1954年創刊で70年の歴史
- 初期の表紙は大学別に色分け
- 1964年朱色統一、1985年現在の赤色に
- 発行元は京都の世界思想社教学社
- 学術書と教育書の二つの顔を持つ出版社
- 江戸時代にも色分けされた草双紙が存在