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2026.07.11

大阪歴史博物館「難波宮跡発掘50周年記念 古代都市誕生-飛鳥時代の仏教と国づくり-」図録レビュー

飛鳥時代には、王宮や寺院を中心に人と物が集まり、のちの藤原京へつながる都市づくりが進みました。大阪歴史博物館の特別展「難波宮跡発掘50周年記念 古代都市誕生-飛鳥時代の仏教と国づくり-」の図録は、中国・朝鮮半島から飛鳥、難波、大津、藤原京、さらに大宰府や多賀城まで視野を広げ、古代都市が成立していく過程を272点の図版でたどる一冊です。

-・- 目次 -・-
  • 難波宮跡発掘50周年記念 古代都市誕生-飛鳥時代の仏教と国づくり-
    • 飛鳥時代の出来事
  • 図録の見どころ
    • 東アジアの都城と仏教から都市の源流をたどる
    • 飛鳥・難波・大津に生まれた古代都市
    • 藤原京と条坊制から都市住民の生活を見る
    • 大宰府と多賀城へ広がる都市づくり
    • 特別寄稿と資料編で発掘成果を調べ直せる
  • 図録の詳細と読後の感想
    • 図録情報
    • 図録 目次
    • 図録を読み終えて

特別展「難波宮跡発掘50周年記念 古代都市誕生-飛鳥時代の仏教と国づくり-」 展示図録の表紙 大阪歴史博物館発行 撮影:junk-word.com(爆点日本史編集部)大阪歴史博物館で開催された特別展「難波宮跡発掘50周年記念 古代都市誕生-飛鳥時代の仏教と国づくり-」展示図録の表紙 撮影:junk-word.com(爆点日本史編集部)

難波宮跡発掘50周年記念 古代都市誕生-飛鳥時代の仏教と国づくり-

飛鳥時代の出来事

図録を紹介する前に、まずは飛鳥時代の出来事を整理しておきます。飛鳥時代は、奈良盆地南部の飛鳥を政治の中心とした時期を軸に捉えられます。ただし、その始まりと終わりには複数の区切り方があり、6世紀末から平城京へ遷都する710年までを広く含める場合もあれば、藤原京が成立する7世紀末までを中心に扱う場合もあります。

この時代を理解するうえで重要なのが、王宮の造営、仏教の受容、外交、制度整備が並行して進んだことです。6世紀末には飛鳥寺の造営が始まり、飛鳥には王宮と寺院を核とする政治・儀礼の空間が形づくられていきました。推古天皇の時代には冠位十二階や憲法十七条が定められ、遣隋使が派遣されるなど、王権の仕組みと東アジア諸国との関係が整えられていきます。

645年には蘇我入鹿が倒された乙巳の変が起こり、その後は大化改新と呼ばれる政治改革が進められました。孝徳天皇は難波へ移り、難波長柄豊碕宮が造営されます。難波は瀬戸内海を通じて西日本や朝鮮半島方面と結ばれる交通上の要地でした。現在の難波宮跡からは、大規模な宮殿施設の存在を示す遺構が確認されています。

7世紀後半には、朝鮮半島をめぐる情勢も日本列島の政治に影響を与えました。663年の白村江の戦いで倭の軍が唐・新羅連合軍に敗れると、防衛体制の整備が進められます。天智天皇の時代には近江大津宮へ都が移されましたが、672年の壬申の乱を経て、大海人皇子が天武天皇として即位しました。

天武天皇と持統天皇の時代には、法や行政制度を基盤とする国づくりが進みます。694年には持統天皇が藤原宮へ移り、宮殿、官庁、道路、街区を計画的に配置した藤原京が政治の中心となりました。王宮と寺院が都市の中心を担った段階から、条坊道路と官僚制度を備えた律令都市へ。この変化を追うことが、飛鳥時代の出来事を都市の歴史として理解する手がかりになります。

図録の見どころ

東アジアの都城と仏教から都市の源流をたどる

第Ⅰ章では、中国・南北朝時代と朝鮮・三国時代の都城や寺院を取り上げています。北魏の都・洛陽に建立された永寧寺(えいねいじ)、新羅の都・慶州に造営された皇龍寺(こうりゅうじ)をはじめ、飛鳥時代の都市と仏教を考えるうえで比較対象となる遺跡や資料が並びます。

永寧寺跡から出土した人物像や瓦、皇龍寺跡の瓦、装身具、舎利容器など、掲載資料の種類は多彩です。仏教寺院が信仰の場であると同時に、都の景観を形づくる大規模施設でもあったことを、建築部材や仏教関係資料から考えられます。

日本の飛鳥時代だけを見ていると捉えにくいのが、王宮と寺院を中心とした都市づくりの背景です。本章を先に読むことで、後続する飛鳥、難波、大津の章に登場する瓦や仏教資料が、東アジアの都市文化とどのようにつながるのかを意識しながら図版を見られます。

飛鳥・難波・大津に生まれた古代都市

第Ⅱ章では、飛鳥、難波、大津に築かれた王宮と寺院を中心に、7世紀の都市形成を追います。飛鳥寺、豊浦寺、坂田寺、山田寺、川原寺といった寺院の資料に加え、飛鳥京跡、難波宮跡、大津宮に関係する遺物が掲載されています。

飛鳥の都市づくりでは、王宮だけでなく寺院が大きな役割を担いました。軒丸瓦や軒平瓦、塔心礎の埋納品、塼仏、塑像断片などを見比べると、寺院の造営に多くの技術と物資が集められていたことが伝わります。木簡や墨書土器など、政治や行政の動きを考える資料が収録されている点も見逃せません。

難波の項目では、百済土器、新羅土器、木簡、瓦、小型鴟尾(しび)など、難波宮と周辺の様子を示す資料を確認できます。四天王寺の瓦や鴟尾、風鐸(ふうたく)も加わり、宮殿と寺院の双方から都市を捉えられる内容です。

飛鳥、難波、大津を順に読むと、都が移るたびに王宮と寺院がどのように配置され、どのような資料が残されたのかを比較できます。一つの都だけでは見えにくい7世紀の変化を、複数の遺跡を横断して確かめられる章です。

藤原京と条坊制から都市住民の生活を見る

第Ⅲ章は藤原宮と藤原京を扱い、飛鳥で始まった都市づくりが、道路と街区を計画的に配置した都城へ展開する過程を紹介しています。藤原宮の瓦、建築工具、建築部材、墨書土器、木簡など、宮殿の造営と行政活動に関係する資料が中心です。

藤原京の項目では、硯、金具、碁石、桃の種、籌木、井戸枠に転用された櫃、祭祀遺物なども掲載されています。宮殿建築や政治制度だけでなく、都に住んだ人々の仕事、暮らし、祈りへ視線を広げられるところが読みどころです。

飛鳥の都市と藤原京の違いを考える際には、条坊制の有無だけでなく、都に集まる役人、物資、文書、生活用品にも目を向ける必要があります。本章の図版は、計画都市という言葉だけではつかみにくい藤原京の実像を、出土品から確認する手がかりになります。

大宰府と多賀城へ広がる都市づくり

第Ⅳ章では、畿内の都市形成と列島各地の政治拠点との関係を、北部九州と東北地方の資料から紹介しています。西では那津官家(なのつのみやけ)から大宰府へ、東では郡山遺跡から多賀城へという二つの流れが取り上げられています。

北部九州の項目には、那珂遺跡、三宅廃寺、大宰府、観世音寺、大野城、鴻臚館(こうろかん)などの資料を収録。瓦、土器、木簡、硯、祭祀に関係する木製品、中国産陶磁器などを通じて、外交、行政、寺院、物資流通が重なり合う地域の姿を追えます。

東北地方の項目では、郡山遺跡、赤井遺跡、名生館(みょうだて)官衙遺跡、多賀城、多賀城廃寺などが登場します。官衙や寺院の瓦、木簡、硯、漆に関係する資料、祭祀遺物を見比べることで、中央の制度や仏教文化が各地域でどのように受け入れられたのかを考えられます。

飛鳥や藤原京だけで終わらず、大宰府と多賀城まで収録したことで、古代都市の形成を列島規模で見渡せる章になっています。西と東の資料を行き来しながら、共通点と地域ごとの違いを探せるのも本書を読み返す楽しみです。

特別寄稿と資料編で発掘成果を調べ直せる

巻末の資料編には、12ページにわたる特別寄稿が掲載されています。テーマは「難波宮跡の発掘から見た古代都市―大阪」「中国南北朝時代の近年の発掘成果」「朝鮮半島における都城・寺院の近年の調査」の3本です。

本文は文章を中心とした解説で、図版を見て生まれた疑問を掘り下げる際に役立ちます。難波宮だけでなく、中国や朝鮮半島の調査成果も取り上げているため、第Ⅰ章と第Ⅱ章を結びつけて読み直せる内容です。

同じく資料編には、年表、出品目録一覧も収録。出品目録では資料名、指定、点数、遺跡所在地、出土遺跡、法量、時代、所蔵・保管、写真提供・撮影者まで確認できます。272点の図版から気になった資料を探し、所在地や所蔵先を調べるための入口としても使えます。

図録の詳細と読後の感想

図録情報

図録名 難波宮跡発掘50周年記念 古代都市誕生-飛鳥時代の仏教と国づくり-
発行 大阪歴史博物館
発行日 2004年10月27日
ページ数 159頁
価格 2,200円

図録 目次

ごあいさつ
第Ⅰ章 都市の源流―東アジア古代都市の諸相
第1節 中国・南北朝時代の都城と仏教
第2節 朝鮮・三国時代の都城と仏教
第Ⅱ章 都市の誕生―飛鳥および難波、大津
第1節 飛鳥―王宮と寺院を核にした都市づくり
第2節 難波―古代都市の開花
第3節 飛鳥の再開発
第4節 近江遷都 大津宮
第Ⅲ章 律令都市の成立―藤原京
第1節 藤原宮
第2節 藤原京―都市住民の生活
第Ⅳ章 列島諸地域の都市―西と東
第1節 那津官家から大宰府へ
第2節 郡山遺跡から多賀城へ
資料編

図録を読み終えて

『難波宮跡発掘50周年記念 古代都市誕生-飛鳥時代の仏教と国づくり-』は、図版を見ながら古代都市の展開を追っていく図録です。各図版には短い解説が添えられており、中国・朝鮮半島の資料から飛鳥、難波、大津、藤原京、大宰府、多賀城へと読み進められます。

なかでも印象に残ったのは、飛鳥時代の都市を王宮だけで説明せず、寺院と仏教の役割を重ねて紹介している点です。瓦、仏像、舎利容器、木簡、土器、建築部材など、性格の異なる資料が収録されているため、政治、宗教、建築、生活という複数の方向から古代都市を見られました。

第Ⅰ章で東アジアの都城と寺院を確認し、第Ⅱ章以降で日本列島の資料へ進む章立ても分かりやすく感じます。藤原京で完成する計画都市だけを出発点にせず、その前段階にあたる飛鳥、難波、大津を詳しく扱っていることが、本書の魅力です。

展示を観覧した人へ

会場で見た資料を、都市ごと、遺跡ごとに整理し直したい人に向いています。展示では追い切れなかった中国・朝鮮半島との比較や、飛鳥から難波、大津、藤原京へ至る流れを図版で復習できます。詳細な出品目録を使えば、資料の出土地や所蔵先も改めて確認できます。

展示を観覧していない人へ

飛鳥時代の都市づくりを、王宮、寺院、地方官衙の出土資料から学べる一冊です。272点の図版を通じて、中国・朝鮮半島から受けた影響と、日本列島の各地域へ広がった都市形成をまとめて見渡せます。難波宮、飛鳥、藤原京、大宰府、多賀城など、複数の遺跡を比較したい人にも読みやすい内容です。

おすすめしたいのは、次のような人です。

  1. 飛鳥時代の出来事を都市づくりの視点から学びたい人
  2. 難波宮と飛鳥、大津、藤原京の関係を整理したい人
  3. 仏教が古代の政治や都市形成に果たした役割を知りたい人
  4. 中国・朝鮮半島と日本の都城や寺院を比較したい人
  5. 大宰府や多賀城を含め、古代都市の広がりを列島規模で捉えたい人

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