2007年に名古屋市博物館で開催された開館30周年記念特別展「大にぎわい城下町名古屋」の展示図録について、内容が気になる方へ。江戸時代以前の名古屋から尾張徳川家の概要、さらには名古屋築城と碁盤割の形成や宗春時代の栄華といった図録の見どころを読後の感想とともに紹介します。
- 大にぎわい城下町名古屋
- 江戸時代以前の名古屋
- 江戸時代の尾張徳川家
- 図録の見どころ
- 名古屋築城と碁盤割の形成
- 広小路の運河計画と町屋の変遷
- 生活を律する規則と人々の自治
- 庶民の娯楽と宗春時代の栄華
- 図録の詳細と読後の感想
- 図録情報
- 図録 目次
- 図録を読み終えて

大にぎわい城下町名古屋
本書は227点に及ぶ図版を収録し、名古屋の城下町の成り立ちから人々の暮らしまでをたどる一冊です。巻末には「城下町名古屋早わかりマップ」や「名古屋碁盤割マップ」を収録。郷土史の調べ学習や歴史散策の伴走資料として、手元に置いておきたい実用性を備えています。まずは江戸時代以前の名古屋と、尾張徳川家の成立から名古屋城下町の形成までの流れを押さえておきましょう。
江戸時代以前の名古屋
巨大な城郭が築かれる以前、この地はどのような状況だったのか。室町時代、駿河の今川氏の一族である那古野氏が現在の二の丸付近に城を構え、周囲には万松寺や若宮などの寺社が立ち並ぶ町が形成されていました。
その後、那古野城は織田信秀の手に渡り、若き日の織田信長もここを居城としています。しかし、信長が当時の尾張の政治的中心であった清須城へ拠点を移すと、家臣団や町屋もそれに追従しました。
那古野周辺は一時的に衰退し、のちに名古屋築城が決定するまでの間、尾張の中心は清須に置かれます。土地に刻まれた記憶を知ることで、のちの大規模な都市計画がなぜこの場所で実行されたのかが見えてきます。
江戸時代の尾張徳川家
1600年の関ヶ原の戦いを経て、徳川家康は豊臣方への備えとして清須城に四男の松平忠吉を置きます。忠吉が早世したのち、家康の九男である徳川義直が清須城主となり、尾張徳川家の初代となりました。当時の清須は室町時代から続く都市として発達していたものの、水害に弱く、都市をさらに拡張する余地を残していませんでした。
そこで家康は、かつての那古野城跡地への遷府と新たな城の建設を決断。西国・北国などの諸大名を動員した天下普請により名古屋城が築かれ、清須城下の武士や主だった商人・職人、寺社などを名古屋へ移す清須越が進められます。こうして尾張徳川家の拠点として、計画的に区画された碁盤割の城下町が産声を上げました。
図録の見どころ
名古屋築城と碁盤割の形成
名古屋城の縄張りと、清須越による住民移転の実態に迫る章です。整然と東西南北に走っているように見える碁盤割の道が、実際には反時計回りに約5度傾いている点を提示。図録では、城の配置の影響を受けたという見方を紹介しつつ、台地の地形や旧来の道筋の影響もありうると整理しています。
清須から物資を運搬する際の枇杷島橋(びわじまばし)での苦労など、計画都市が完成するまでの試行錯誤も読みどころ。初期の城下町がどのような思想と物理的な困難のもとに形作られたのかを、当時の絵図とともに立体的に把握できます。
広小路の運河計画と町屋の変遷
万治の大火後の都市改造や、実現しなかった幻の計画を当時の図面から読み解きます。「名古屋堀川東伝馬町南之図」には、広小路を東へ延長する形で幅約40メートルにも及ぶ巨大な運河の計画線が残されています。
重量物である瓦や石の運搬が目的だった可能性、道路拡幅に伴う武家・町人の移転計画にも触れています。絵図に残された細かな区画線や書き込みを追うことで、江戸時代の都市計画の動きを直接観察できる仕上がりです。
生活を律する規則と人々の自治
城下町で暮らす人々の生活ルールと、町内の自治システムを取り上げています。時の鐘や火の見櫓の設置、城下への入り口を固める大木戸の存在など、生活と警備を支えた仕組みに触れています。
また、町奉行から出される町触を通じた法令規制だけでなく、橋の架け替え工事における入札制度、御冥加に応える奉仕として行われた冥加普請、災害時の町単位の食料提供にも言及しています。行政による管理と、町を単位とした暮らしの運営がどのように重なっていたのかを具体的に学べます。
庶民の娯楽と宗春時代の栄華
図録では、「尾張年中行事絵抄(おわりねんじゅうぎょうじえしょう)」や「名陽見聞図会(めいようけんもんずえ)」をとりあげ、見世物小屋にやってきたラクダやヒョウといった異国の動物、寺社の開帳に群がる群衆、郊外で打ち上げられる花火など、娯楽に沸く庶民の姿を紹介しています。
また、享保の改革で倹約が重んじられるなか、規制を緩和し、名古屋城下ににぎわいを生んだ徳川宗春の時代の熱気を伝えます。
「享元絵巻(きょうげんえまき)」には、本町通のにぎわいが色鮮やかに描かれ、江戸・大坂・京都をしのぐともいわれた当時の名古屋の空気を、豊富なビジュアル資料を通じて追体験できます。
図録の詳細と読後の感想
図録情報
| 図録名 | 大にぎわい城下町名古屋 |
|---|---|
| 発行 | 特別展「大にぎわい城下町名古屋」実行委員会 |
| 発行日 | 2007年9月21日 |
| ページ数 | 157頁 |
図録 目次
図録を読み終えて
「那古野村之古図」「名古屋堀川東伝馬町南之図」「御城下之図」などの古地図が多数掲載され、当時の町割りや家並みを鮮明に確認できました。享元絵巻からは宗春時代の熱気が伝わり、名古屋に関連する豊富な図版としっかりとした解説テキストのバランスが良い一冊です。
会場で目にした複雑な町割りや詳細な絵図を、自分のペースでじっくり読み解くための再読に向いています。巻末マップと照らし合わせることで、展示内容の理解がさらに深まります。
227点もの豊富な図版が収録されており、会場へ足を運んでいなくても当時の熱気を十分に味わえます。手元で詳細な絵図を広げるだけでも高い満足感が得られます。
おすすめしたいのは、次のような人です。
- 江戸時代の都市計画や町割りの変遷に興味がある人
- 豊富な古地図や絵巻物から当時の人々の暮らしを視覚的に楽しみたい人
- 名古屋の歴史散策をより深く味わうための資料を探している人

